会社といっても「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4つがありますが、最も一般的な会社が「株式会社」であることは間違いありません。
実は大手でも会社形態が「合同会社」である企業もあります。
例えば、「アマゾンジャパン」、「アップルジャパン」、「Googleジャパン」なども合同会社です。
とは言え、個人が小規模に起業する場合の信用度は、一般的には「株式会社」の方が高いです。
実際に株式会社を設立する際に、必要となる書類や登記手続きの流れについて、ご説明致します。
設立方法の選択
株式会社を設立する方法としては、次の2つがあります。
発起設立
発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法。
募集設立
発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法。
発起人とは?
「発起人」とは、資本金を出資して、定款の作成など会社設立の手続きを行う人のことで、設立後の株主になります。
小規模な企業の場合に出資者を公募することは、まずないと思いますので、ほとんどの場合が「発起設立」になります。
よって、発起設立に絞ってお伝えします。
株式会社設立の流れと必要な書類
大まかですが、手続きの流れに沿って必要となる書類等を表にしてみました。
手続の順番 | 必要な添付書面 |
印鑑の作成 | 実印、銀行員、認印、ゴム印の作成 |
定款の作成・認証 | 定款 |
設立時発行株式に関する事項の決定 | 発起人全員の同意書 |
検査役の調査(現物出資時) | 検査役の調査報告書・付属書類 |
出資の履行 | 払込証明書 |
発行可能株式総数の設定・変更 | 発起人全員の同意書 |
取締役の選任 | 発起人の議決権の過半数の一致を証する書面 (又は定款の記載・記録を援用) 就任承諾書・印鑑証明書 |
他の設立時役員等の選任 | 発起人の議決権の過半数の一致を証する書面 就任承諾書 |
設立時代表取締役の選定 | 発起人の議決権の過半数の一致を証する書面 就任承諾書 印鑑証明書 |
出資金の払い込み | 資本金額を準備 |
設立登記申請 (司法書士に依頼する場合) | 委任状 |
機関設計
平成18年に新会社法が施行されるまでの株式会社は、徐々に緩和されて来たものの、資本金や意思決定機関などが厳格に定められていました。
会社の機関とは、会社の意思決定や運営をする人や会議体のことです。
具体的には、株主総会、取締役、取締役会、監査役、監査役会、委員会、執行役、会計監査人、会計参与のことを指します。
自分だけで会社を立ち上げて、共同経営をされない場合は、取締役のみの機関設計で問題ありません。
この場合、株主(出資者)=代表取締役とできるため、全て自分の方針で会社の意思決定を、決めることが可能だからです。
取締役とは?
取締役とは、業務執行に関する意思決定を行う者のことです。
取締役会を設置している会社では、業務の執行には代表取締役があたります。
しかし、創業メンバーが複数いる場合には、しっかりと将来を見据えて機関設計をした方が、間違いありません。
取締役会を設置しない場合には、全ての意思決定が株主総会でするのに対し、出資者=取締役ではない場合には、取締役会があった方が、機動的な意思決定が容易になります。
ただし、取締役会を設けるには、取締役が3名以上必要になります。
しかし、取締役会を設置すると必ず監査役を選任しなければならなくなります。
監査役とは?
監査役とは、取締役の職務執行や計算書類等の監査を通じて、取締役を監督する役員のことです。
経営をやりやすくするためには、取締役会や監査役を設置しない、簡素な機関設計が理想です。
ただ、一緒に起業しようという仲間に恵まれた場合には、将来を見据えて考えなければなりません。
株式会社の機関設計には、数え切れないほどのパターンがありますが、小規模な起業の際に選び得るのは、下記の3つくらいです。
- 株主総会+取締役
- 株主総会+取締役+監査役
- 株主総会+取締役会+監査役
譲渡制限規定の必要性
上記の様に簡素な機関設計をしたり、役員の任期を伸長するためには、「株式の譲渡制限規定」を設けておかなければなりません。
株式を譲渡する場合には、代表取締役や株主総会の承認を必要とする決まりです。
株式の譲渡制限とは?
「株式の譲渡制限」とは、会社を運営するにあたって、株主が誰であるかは会社の意思決定における重要事項であり、自由に株主が変わってしまうと、安定した会社経営ができない虞があります。
そこで、株式会社はその株式の譲渡をする際には、当該株式会社の承認を要する旨の定めを、定款に設けることができるとされています。
会社法での会社は大きく「公開会社」と「株式譲渡制限会社」の2つに分かれます。
「公開会社」とは、その会社が発行する株式のうち1株でも譲渡自由な株式がある会社のこと指すのであって、上場会社のことではありません。
それに対して「株式譲渡制限会社」とは、発行しているすべての株式が上記の譲渡制限株式である会社のことです。
正式には「公開会社でない株式会社」、俗に「閉鎖会社」とも言います。
株式譲渡制限会社は、個人に近い規模で起業する会社にとって、メリットがたくさんあります。
特に取締役の人数は原則3名以上ですが、1名でも設立できるのはその大きなメリットの内の一つです。
本来、譲渡制限を設ける理由は、「会社にとって都合の悪い第三者が株式を持つことを防ぐため」と「株主が誰か把握するため」の2点に絞られます。
しかし、実際には、下記表のメリットを受けるために設定することがほとんどです。
株式譲渡制限会社と公開会社を比べてみました。譲渡制限会社の方が優遇されています。
項 目 | 株式譲渡制限会社 | 公開会社 |
取締役の人数 | 1名以上 | 3名以上 |
取締役会の設置 | 設置しないことができる | 必須 |
監査役の設置 | 設置しないことができる | 必須 |
取締役の任期 | 最長10年まで延長可 | 2年 |
監査役の任期 | 最長10年まで延長可 | 4年 |
株主総会の招集通知 | 1週間前までに発送 | 2週間前までに発送 |
議決権制限株式の発行 | 発行制限なし | 発行済み株式総数の1/2迄 |
定款の作成
全ての記載事項を最初の段階で決める必要はありませんが、「定款」(ていかん)を作成しなくてはなりません。
定款とは?
「定款」とは、会社の憲法とも呼ばれるもので、会社を運営していく上での基本的規則を定めたものです。
会社名も記載事項に含まれるため、実印やゴム印を用意する期間の兼ね合いからも、早めに内容決定することが必要です。
絶対的記載事項
定款に必ず記載しなければならず、記載を欠いた定款は無効になる「絶対的記載事項」があります。
最初の認証時に公証役場で気が付いてもらえるので、まず起こり得ませんが、この絶対的記載事項の一部を欠いたまま認証された定款は、公証人の認証を受けたとしても無効となります。
以下、絶対的記載事項について見ていきます。
目的
会社の行う事業内容です。
記載できる数に制限がありませんので、将来的に行う予定の事業も記載しておいた方が後々の手間やコストが少なくなります。
事後的に事業目的を追加することもできますが、実費(登録免許税)だけで3万円の登記費用がかかってしまいます。
以前は表現に厳しく具体性明瞭性等を求められていましたが、現在はかなり緩和されています。
違法でなければ、何を書いても手続きは完了しますが、取引先にどんな事業を営んでいるかを見てもらう部分でもありますので、内容はもちろん、具体的に分かりやすい表現にすることもポイントです。
この目的に記載していない事業を行った場合、罰則はありませんが、その事業は無効となり会社に帰属しませんので、ちゃんと網羅しておく必要があります。
とは言え、最後の一文に「前各号に付帯関連する一切の事業」と記載するのが通常なので、よほど業種が異ならなければ、関連して含まれることになります。
商号
商号とは、会社名のことです。
後から変更もできますが、ご自身が愛着を持てる分かりやすい会社名を付けて下さい。
商号の決め方にはルールがあり、何でもいいわけではありません。
会社名の前後に必ず株式会社を付けるとか、漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字・アラビア数字が使用するなど、会社法で定められたルールがあります。
また、既に登記してある会社と、全く同じ住所と会社名である時は、その商号を選ぶことができません。
本店所在地
会社の本店所在地に制限はありません。
自宅やビル、賃貸借契約上事業で使用することが認められているオフィスであれば、どこでも登記することが可能です。
商号と同じく名刺交換等ですぐ目に付きますので、信頼がおける場所の方が、印象がよくなって、メリットのある場合もあります。
設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
株式会社を設立する場合に、設立時に出資される財産の額については、必ずしも確定した額でなくてもよく、「その最低額」を決定すればよいことになっています。
これは、定款作成後、定款に記載した「発起人の出資額」のうちの一部分のみしか、出資の履行ができないような場合にも、設立ができるように認められた措置です。
ただし、株式会社登記申請時には「資本金の額」を確定する必要があります。
発起人の氏名又は名称及び住所
「発起人の住所氏名」が最初の定款(原始定款)に必ず記載されます。
「発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数」及び「設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額」については、必ずしも定款に記載する必要はありませんが、定款に記載がない場合には、「発起人全員の同意」で決定しなければなりません。
この項目で一緒に記載してしまえば、「発起人全員の同意書」は不要になります。
発行可能株式総数
「発行可能株式総数」とは、会社が将来的に何株まで株式を発行できるかの上限です。
株式を発行することは、新たな資金調達を意味します。
会社の機関設計によりますが、この総数までは、定款変更が不要のため、機動的に増資の決議がしやくすなります。
相対的記載事項
「相対的記載事項」とは、定款に記載がなくても、定款の効力自体に影響はありませんが、定款に記載しなければ有効にならない事項です。
具体例としては、以下の事項です。
- 現物出資がある場合についてその内容
- 株主総会などの招集通知を出す期間の短縮に関する規定
- 取締役会の設置に関する規定
- 役員の任期の伸長についての規定
- 公告の方法
- 発起人が受ける報酬、その他の特別な利益の内容
- 株式譲渡制限に関する規定
任意的記載事項
「任意的記載事項」とは、法令に反しない範囲で任意に記載する事項です。
任意的記載事項は、定款に記載する義務があるわけではありませんが、定款に記載することによって決定した事項を明確にすることができます。
具体例としては、以下の事項です。
- 株券の不発行に関する定め
- 取締役などの役員の人数
- 事業年度に関する定め
「決算」と「事業年度」
会社を設立した場合には、期間を区切って「いくら儲かったのか」「財産は会社にどれくらい残っているか」を計算する必要があります。
これを「決算」といい、区切った期間を「事業年度」といいます。
事業年度は、1年を超えなければ、自由に決めることができます。
事業年度に関する定めは、決算期をいつにするか決めることですが、繁忙期を避けた方が無難です。
また、法人で事業を始めるメリットでもある、消費税の免税を最大限活かせるように設定して下さい。
最も簡単な定款の例、定款のイメージとして下さい。
定款の認証
会社設立時に作成された定款のことを「原始定款」といいます。
この原始定款を「公証役場」で「公証人」に正式な定款として認めてもらう作業を「認証」と言います。
株式会社の場合、作成したままの状態では効力がありません。
「原始定款」とは?
「原始定款」とは、会社設立時に公証人に認証を受けた定款のことで、公証役場に原本が保管されます。
電子定款の場合は、データが保管されます。
もし、原始定款を紛失した場合でも、手数料はかかりますが、公証役場に依頼して、「謄本」と呼ばれている、効力を持った定款の写しを発行してもらえます。
設立登記において定款認証が必要なのは、「株式会社」のみです。
「合同会社」、「合名会社」、「合資会社」では定款の認証手続きは必要ありません。
管轄(認証してもらう公証役場の範囲)
本店の所在地を管轄する法務局又は地方法務局に所属する公証人の認証 を受けなければ効力を生じません。
県をまたぐと認証してもらえないので、事前に管轄の確認をして下さい。
書面による定款の認証
定款を原本2通以上作成して、公証役場へ持ち込みます。
その内1通に4万円の収入印紙を貼付して公証人に認証してもらいます。
電子定款の作成、認証
「電子定款」の場合、書面でないため、印紙税法の適用を受けないことから、4万円の収入印紙を貼付する必要がありません。
ただし、電子定款を作成するためには電子署名をするためのソフトや、電子証明書が必要になるため、設備を購入するか代行をお願いする必要があります。
必要なものが既にそろっている場合や、代行依頼手数料が4万円を下回る場合は、費用削減のために電子定款を選択し、認証を依頼した方がコスト的には、お得かもしれません。
電子署名後は一切の修正・変更ができないので、定款を認証してもらう前に、定款内容に問題がないかを、公証役場にFAXやメールなどで確認してもらっておくと、認証に問題が少なく、時間もかからずに済みます。
電子定款作成の流れ
具体的な流れは以下のとおりです。
- 必要書類の準備
- 公証人の内容確認
- 定款に電子署名する
- オンライン申請システムを利用して送信する
- 公証役場にて認証を受ける
電子定款作成における注意点
専門家に依頼する場合には準備してもらえると思いますが、電子定款の委任状は書面で作成する必要があります。
定款認証用委任状に認証を受ける定款と同一の内容を綴じ込んで、発起人の実印で契印しなくてはなりません。
設立時発行株式に関する事項の決定
定款の絶対的記載事項である「発起人の住所氏名」の項目で触れましたが、次に定める事項は必ずしも、定款で定めておく必要がない相対的記載事項です。
定款に定めていない場合は、「発起人の全員の同意」をもって決定しなければなりません。
- 発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
- 前号の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額
- 成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項
出資の履行
定款認証後は、いよいよ資本金となる金銭を払い込みます。
不動産や債権といった現物で払い込む現物出資もありますが、小規模な起業時に扱うことは、通常ありません。
なお、定款作成日付よりも前に払い込むことはできませんのでご注意下さい。
出資金の払い込み
発起人(出資者)は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行 株式について、金銭の全額を払い込むか、金銭以外の財産の全部を給付しなければなりません。
出資の履行場所
株式の払込は、発起人が払込を取り扱うべきものとして定めた、銀行等の払込みの取扱いの場所において、行わなければなりません。
金銭出資の履行方法
発起人が定めた銀行等の口座に現実に払込みをすることが必要です。
単に預金口座に資本金に相当する残高があるだけでは、履行したことにはなりません。
発起人が定めた銀行等の口座が原則ですが、発起人から設立時代表取締役への授権があれば、設立時代表取締役名義の口座でも構いません。
(この場合、委任状が登記の添付書面となります)
払い込まれた金額が、発起人の定めた金銭の払込額を超えた場合でも、設立時代表取締役が作成した払込みがあったことを証する書面の金額が、発起人の定めた払込金額と合致していれば問題ありません。
履行時期
払込は原則として、定款認証日後にしなくてはなりません。
しかし、定款認証前の日付で払込がされた場合でも、発起人間で出資に係る金銭の払込額を定めた後に払込がされた時は、設立に際して出資される財産の価額に相当する出資があったものと解することができるので、払込額について定めた定款の作成日又は発起人全員の同意書の作成日以降に、払込みがあった場合については、実務上問題ないとされています。
つまり、定款作成日よりも前に払い込んではいけないということです。
取締役の選任
実際の手続きでは、書面上で済ませてしまうことが多いため、一瞬で実感がありませんが、本来はこの段階まで来てようやく設立後に活躍する役員の「選任」に入ります。
発起人による選任
発起人は出資の履行が完了した後に、取締役を選任しなければなりません。
と言っても、定款で取締役を定めてしまっている場合がほとんどです。
定款で設立時取締役等として定められていた場合には、出資の履行が完了した時に、選任されたものとみなされるので、改めて選任する必要はありません。
選任方法
発起人の議決権の過半数をもって決定します。
レアケースですが、種類株式を発酵している場合には、発起人の中でも議決権を行使できない発起人がいる場合があります。
設立時役員の選任における留意点
設立しようとする株式会社が取締役会設置会社の場合、設立時取締役は3名以上必要です。
代表取締役の選定
いわゆる「社長」の「選定」です。必ずしも代表取締役=社長ではありませんが、会社を立ち上げる方がそのまま代表になるケースがほとんどだと思います。
その選定方法も決まりがありますが、小規模な企業の場合は、取締役会を設置しないことが多いので、取締役会のない場合の選定方法をご説明致します。
定款に代表取締役まで記載してしまえば必要ありませんが、定款に設立時代表取締役の選定方法について定めがないときは、発起人により選定します。
定款に設立時代表取締役の選定方法について定めた場合は、その定めに従って選定することになります。
設立時の定款に、設立時代表取締役の選定方法を規定することができ、例えば、以下の選定方法を規定できます(相対的記載事項)。
- 定款に直接、設立時代表取締役を定める
- 発起人の選定により定める
- 設立時取締役の過半数の決定による
ちなみに取締役会設置会社の場合は、取締役の過半数をもって決定致します。
「選任」と「選定」について
「選任」は不特定多数で一定の地位がない者から選ぶ行為で、逆に「選定」は特定で一定の地位がある者から選ぶ行為です。
株式会社でいうと取締役を選ぶ際は「選任」、代表取締役を選ぶ際は「選定」を用います。
つまり、選ばれた者が選ばれた者の中から更に選ぶことが「選定」です。
取締役の調査
設立時取締役は、以下の事項を調査する義務があります。
監査役設置会社の場合は、設立時監査役も調査をしなければなりません。
- 現物出資された500万円以下の財産及び有価証券について定款で定めた価額が相当であること
- 弁護士等の証明を受けた場合の当該証明が相当であること
- 出資の履行が完了していること。
- 株式会社の設立の手続が法令又は定款に違反していないこと
この中では、実質的に出資の履行だけを調査することになります。
と言うよりも調査したことを証明する書類が登記に必要とされているので、調査せざるを得ません。
また、小規模な起業時には、出資の履行以外に調査をする必要がありません。
現物出資とは?
「現物出資」とは、金銭以外の財産つまり「動産」「不動産」「債権」「有価証券」「無体財産権(特許権、実用新案権)」等で出資することをいいます。
金額にもよりますが、要件がいくつかありますので、現金よりは手軽に利用できません。
実際に調査すると言っても、通帳への入金を確認するくらいです。
資本金額が通帳に残っていることを確認するのでなく、新たに出資金が払い込まれたことを確認しなければなりません。
上記の書類に、通帳のコピーを綴じ込んで証明します。
通帳は、上図の3枚をコピーしなければなりません。
平成18年までは、金融機関に預ける「出資払込金保管証明書」が必要とされていて、融資を受けるのと同じくらいの審査が必要でしたが、今ではかなり簡素化されています。
ただし、発起設立の場合のみで、募集設立の場合は今でも「出資払込金保管証明書」は必要です。
登記申請
登記期間
登記にも申請する期限が定められています。
本稿で説明している発起設立の場合は、次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内に登記申請をしなければなりません。
- 設立時取締役による調査が終了した日
- 発起人が定めた日
登記事項
定款に記載できる事項があるように、登記にも記載できる事項と記載できない事項があります。
全ての株式会社において、必ず登記しなければならない事項
1 | 商号 |
2 | 目的 |
3 | 本店及び支店の所在場所 |
4 | 資本金の額 |
5 | 発行可能株式総数 |
6 | 発行済株式の総数並びにその種類及び数 |
7 | 取締役の氏名 |
8 | 代表取締役の氏名及び住所 |
9 | 公告方法についての定め (公告方法についての定めがないときは、官報で公告する旨) |
定款で定めている場合等に登記すべき事項(全てではありません)
1 | 取締役会設置会社である旨 |
2 | 監査役設置会社である旨及び監査役の氏名 |
3 | 株券発行会社である旨 |
4 | 株主名簿管理人の氏名又は名称及び住所並びに営業所 |
5 | 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨 |
6 | 存続期間又は解散事由の定め |
7 | 公告方法を電磁的記録と定めた場合にはそのウェブページのURL及び予備公告方法 |
添付書面
株式会社の設立登記申請書には、以下の書面等を添付しなければなりません。
以下の表は発起設立の場合に必要な書面です。
1 | 定款 | |
2 | 株式の引受等に関する書面 | 割当て、引受に関する発起人全員の同意書 |
3 | 変態設立事項がある場合にはこれ らに関する書面 | ①検査役が選任された場合はその調査報告書 検査役が選任されないときは設立時取締役等の調査報告書 ②現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券について定款に記載された価額が市場価格以下であるときは、当該市場価格を証する書面 ③現物出資財産等について定款に記載された価格が相当であるにつ いて、弁護士等の証明を受けたときは、その証明書及び附属書類 |
4 | 引受人の出資に関する書面 | 金銭の払込があったことを証する書面 |
5 | 設立時の機関に関する書面 (取締役) | ①設立時取締役の選任を証する書面として定款又は発起人の過半数の一致があったことを証する書面 ② 就任承諾書 |
6 | 設立時の機関に関する書面 (代表取締役) | ・取締役会設置会社の場合 取締役の過半数の一致があったことを証する書面 ・取締役会がない会社の場合 定款 |
7 | 印鑑証明書 | ・取締役会設置会社の場合 代表取締役が必要 ・取締役会がない会社の場合 取締役全員が必要 |
8 | 本人確認証明書 | 設立時取締役等の就任承諾書に記載された住所・氏名についての本人確 認ができる住民票、運転免許証の両面コピーに本人 が原本に相違ない旨の記載と記名押印があるもの ※ただし、印鑑証明書が添付書面となる場合を除く |
9 | 発起人の同意又は一致を証する書面 | ①本店の具体的な所在場所の決定をする場合、発起人の過半数の一致を証する書面 ②支配人を選任する場合、発起人の過半数の一致を証する書面 ③成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項等会社法32条に関する事項ついては発起人の全員の同意を証する書面 |
10 | 資本金計上証明書 | 出資に係る財産が金銭のみである場合の設立登記に際しては不要 |
11 | 官庁の許可を要するときは、その許可書又は認証ある謄本 | 医療法人等設立に許可が必要な場合 |
12 | 委任状 | 司法書士に依頼する場合 |
13 | 登録免許税 | 登記申請に株式会社設立登記の登録免許税として15万円納めなくてはなりません 資本金が大きい場合は、更にかかる場合があります 資本金の1000分の7か15万円どちらか高い方の金額になります |
登記申請書と添付書類のひな形
インターネットを通じてオンラインで登記をする方法もありますが、繰り返し行うわけではないので、紙で申請書と添付書類を作成して、法務局の窓口に持ち込んだ方が、簡単です。
具体的な申請書の作成は、下記を参考にして作成して下さい(法務省の公式サイトより)。
登記申請書
定款
発起人の同意書
設立時取締役選任及び本店所在場所決議書
設立時代表取締役選定決議書
調査報告書
財産引継書
払込証明書
資本金の額の計上に関する証明書
就任承諾書
委任状
印鑑届出と印鑑カードの交付申請
会社設立登記とは直接関係はありませんが、登記申請時に会社の実印を登録しなければなりません。
通常登記申請書と同時に「印鑑届出書」も提出します。
登記完了後は、会社の印鑑証明書を取得する際に必要になる「印鑑カード」の交付手続きもします。
この用紙で会社の実印登録をします。
こんなカードが発行されます。
会社設立日について(管轄法務局と申請方法)
登記を申請する役所は、設立する会社の本店所在地を管轄する法務局です。
申請方法もいくつかあります。
「書類一式を法務局へ持参する方法」
「郵送する方法」
「オンラインによる電子申請による方法」
いくつか申請方法がありますが、気をつけなければならないのは、「登記申請をした日」が「会社設立日」となる点です。
よって、法務局が受付をしない土日祝祭日は、設立日になりません。
日柄等にこだわったり、何かの期限がある場合は注意して申請して下さい。
郵送の場合は、法務局に到着した日が会社の設立日になります。
土日祝祭日の場合は、その明けた日になります。
上記の様に煩雑な手続きが必要とされるので、司法書士等の専門家に依頼された方がスムーズです。
定款の電子認証を利用すれば、収入印紙代が4万円省けますが、設備が必要になりますので、自分で登記を完了させても大幅な費用削減にはならない場合もあります。
株式会社設立登記に必要な事項をまとめた確認リストを掲載しますので、参考にしてみて下さい。
登記申請手続完了後
登記手続きが完了すると会社の戸籍のような証明書である「履歴事項証明書」いう登記簿を取得できるようになります。
まとめ
会社設立登記を経験すると、株式会社の組織構造の仕組みを理解することができます。
しかし、設立登記は、そう何度も自分ですることはないので、専門家に頼んだ方が時間短縮となり、起業の準備に集中できるかと思います。
また、ご自身で登記申請をする際に、定款の電子認証がネックになってきます。
収入印紙代4万円の差額は結構大きいので、そこも含めてお考え下さい。