相続・遺言・登記

登記の役割や効力と相続登記のパターンや所要時間

2020年7月26日

相続登記とは、亡くなった方が所有していた不動産の名義を変えることなので、故人がどんな不動産を所有していたか、把握しなければなりません。

また、亡くなった方の相続人が誰であるかを確定し、どの不動産を誰が取得するかを決めないと行けません。

誰が取得したか確定すれば、その相続人の所有物になりますが、その結果を登記に反映しておかなくてはならない理由を、不動産登記の役割から、ご説明致します。

 

不動産登記の役割

不動産登記の役割はいくつかありますが、権利変動が発生したり、権利の帰属を決めたりしたことを後から登記簿に反映する報告的なものから、登記をして初めて効力を持つものまであります。

相続登記は、登記をして効力を持つものではなく、実体上起こった権利変動を登記簿へ報告的に記載する作業に当たります。

相続登記の流れに入る前に、簡単に登記の役割についてご説明致します。

 

対抗力

相続登記を始めとする、不動産登記をしておかなくてはならない最も大切な理由です。

登記申請して、名義を備えておくと「登記をした権利は第三者に対して主張できる」という効力を持ちます。このことを「対抗力」といいます。

相続登記に期限はありませんが、登記をしておかないと、不測の損害を被ることがないとは言えません。

その為にも、すみやかに手続きを済ませておくことが必要です。

 

権利推定力

「権利推定力」とは、実は、登記をしたからといって、確実なものになるわけではありません。登記された事項が、「一応真実である」と推定される効力のことをいいます。

その登記を信頼し、取引に入った第三者には過失がないものと推定されます。もっとも、あくまでも「推定力」ですので、第三者が反証をすれば覆る可能性があります。

日本の登記制度では、「公信力」が認められていません。

「公信力」とは、登記上の表示を信頼して不動産の取引をした者は、たとえ登記名義人が真実の権利者でない場合でも、一定の要件の下で、その権利を取得することが認められるというものです。

間違った登記を信頼しても、保護されない場合があるのです。

 

形式的確定力

「形式的確定力」とは、存在する登記の有効や無効に関わらず、一度された登記を無視してその他の登記手続きをすることのできない効力のことをいいます。

たとえば、無効な登記がなされていたとしても、その登記を一旦抹消するなどの手続きを経なければ、たとえ真実の権利者であっても登記をすることができません。

相続登記に必要な情報

亡くなった方が持っていた不動産の名義を変更するには、以下のポイントを押さえなければなりません。

相続登記まで必要な事項
  • 所有不動産の調査
    名義変更に漏れがないように
  • 相続人の確定
    話し合う人に漏れがないように
  • 遺産の分配
    誰がどの不動産を取得するか

上記のポイント意外にも、遺産の分配や必要書類の取得に、大きく相続登記の流れを変える要素があります。

それが遺言書の存在です。

 

遺言書がある場合

遺言書も、自筆証書遺言か公正証書遺言かで、手続きが変わって来ますが、基本的に遺言書の内容どおりに名義を変更することになります。

遺言は、残された相続人がもめることのないようスムーズに手続きが行えるように作られるものですので、手続きも1番簡単です。

 

遺言書がない場合

遺言書がなければ、相続人間で話し合う「遺産分割協議」をして、誰がどの不動産を取得するか決定します。

法定相続分どおりに、名義を変更する方法もありますが、相続分の割合で不動産を持ち合うことになりますので、現実的とは言えません。ただ、書類の数は少なく済むので、手続きは簡便になります。

この場合、「遺産分割協議書」の作成が必要になります。協議がすんなりまとまれば、そんなに難しい手続きにはなりません、もし、相続人間でもめたり、音信不通の相続人がいたりすると、話し合いをまとめることが難しいかもしれません。

 

相続登記に必要な書類

相続登記は法務局に申請しますが、法務局が名義を変更していいかどうかの審査をします。

その為に、根拠となる書類を提出しなければなりません。

法務局は、提出された書類からしか審査をしないので、不足している書類や申請内容に不備があると相続登記をしてもらえないのです。

では、どういった書類等が必要になるか、まとめてみました。

登記申請書自分で作成
相続関係説明図自分で作成
収入印紙郵便局
亡くなった人の戸籍謄本(除籍、改製原戸籍を含む)市区町村役場
遺言書がある場合
 亡くなった人の死亡記載がある戸籍謄本
遺言書がない場合
 出生から死亡までのすべての戸籍謄本
市区町村役場
亡くなった人の住民票除票 又は戸籍の除附票市区町村役場
相続人全員の戸籍謄本市区町村役場
不動産を相続する相続人の住民票市区町村役場
遺産分割協議書自分で作成
相続人全員の印鑑証明書
(遺産分割協議書の場合)
市区町村役場
遺言書 
不動産の固定資産評価証明書市区町村役場

 

相続登記にかかる時間

不動産登記自体は、法務局に申請した瞬間に終わるわけではありません。

申請書を提出したら、申請内容を法務局が審査します。

審査が終わると、無事相続人の名義に変わりますが、この審査に時間がかかります。

法務局によって、その処理時間が異なりますが、申請からおおよそ1週間くらいは、みておいた方がいいです。法務局の混み具合により、遅かったり早かったりします。

申請してからは、時間の予測が立てやすいのですが、実は最も時間がかかるのは、相続登記に必要な書類を用意することです。

ケースごとにかかる時間の少ない順に並べ、必要事項を順次付け加えてみました。

ご自身で相続登記をする場合に、スムーズに終わった場合に、かかるであろう最短時間の目安も記載致します。

 

所要時間が少ない相続登記の順番と作業内容

公正証書遺言による相続登記(最短1ヶ月程)

・故人が所有していた不動産の調査

・相続登記に必要な書類の取得

・登記申請

・登記完了

自筆証書遺言による相続登記(最短2ヶ月程)

・故人が所有していた不動産の調査

・相続登記に必要な書類の取得
  家庭裁判所に検認申立

・登記申請

・登記完了

法定相続による相続登記(最短2ヶ月程)

・故人が所有していた不動産の調査
  相続人の調査確定

・相続登記に必要な書類の取得

・登記申請

・登記完了

遺産分割協議による相続登記(最短3ヶ月程)

・故人が所有していた不動産の調査
  相続人の調査確定

・相続登記に必要な書類の取得
  遺産分割協議
  遺産分割協議書の作成

・登記申請

・登記完了

 

遺産分割調停による相続登記(最短半年以上)

遺産分割協議がまとまらなかったときは、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てることになります。

この場合は、まず弁護士、司法書士といった専門家に相談しましょう。

 

まとめ

相続人が自分一人ならば、話し合いの要素もないので、自分の範疇でできてしまい、何の問題もありません。

しかし、通常は他に相続人がいる場合がほとんどなので、人数が多ければ、多いほど手続きは大変になってきます。

戸籍や除籍といった用意する書類が増え、集まって話をして、内容を決めた上で遺産分割協議書へ署名押印をしてもらわなくてはなりませんから、かなり時間がかかります。

また、財産の種類や額が大きいと、相続税の兼ね合いもあって、より決めにくくなります。

不動産の名義人が配偶者や親以外の義になっていたりすると、次々に相続が発生していることもあり、相続人の人数はどんどん増えていきます。

少しでも手に負えないなっと感じたら、こじらせる前に専門家に依頼してしまった方が、苦労せずに済むかもしれません。

 

 

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