相続・遺言・登記

【自筆証書遺言の書き方】見本の文例と無効を防ぐ簡単なポイント

2020年9月17日

「自筆証書遺言」とは、遺言者本人が、「本文」「氏名」「日付」を自書して作成する遺言書のことです。

現在は、法務局で遺言書を保管してくれる制度も始まっていて、より利用しやすくなりました。

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以前は全文の自筆が求められていましたが、今では財産目録は印刷したものでも、使用できるようになりました。

各遺言書には特徴があり、自分に合ったものを選ぶとよいのですが、自筆証書遺言は、気軽に書き直せることが、特徴と言えます。

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今回は、自筆証書遺言の具体的な書き方をご説明致します。

自筆証書遺言の書式

遺言は、「要式行為」といって、民法に定める方式に従わなければ、することができませんが、実は決まった書式がある訳ではないのです。

遺言の方式さえ守っていれば、自由に書いても問題ありません。

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そうは言っても、どうやって書けばよいのかも自由すぎては分からないと思いますので、記載例に従って作成するとスムーズです。

 

遺 言 書

遺言者〇〇〇〇は、妻〇〇〇〇、長男〇〇〇〇、次男〇〇〇〇に対して、次のとおリ遺言する。


1.妻〇〇〇〇に、現金1,000万円を相続させる。


2.次男〇〇〇〇に、次の土地建物及び現金500万円を相続させる。
(1)土地

 〇〇県〇〇市〇〇1丁目2番3
 宅地 〇〇〇.〇〇平方メートル
(2) 建物
 〇〇県〇〇市〇〇1丁目2番地3 家屋番号〇番
 鉄筋コンクリート造2階建 居宅
 1階 〇〇.〇〇平方メートル
 2階 〇〇.〇〇平方メートル


3.長男〇〇〇〇には、遺言者の経営する〇〇〇会社の後継者として事業経営をさせるため、その余の全財產を相続させる。


4.祖先の祭祀主宰者として長男〇〇〇〇を指定する。


5.遺言執行者として長男〇〇〇〇を指定する。

令和〇〇年〇〇月〇〇日     
〇〇県〇〇市〇〇1丁目2番3号
遺言者(署名)     印 

上記は、一例ですが、ご自分の状況に合わせて、自由に変更して作成して下さい。

いくら自由に書いていいといっても、法律に触れるような内容や、自分が所有していないような財産を残すことはできません。

自分の所有している財産の内、「どの財産を」「誰に」「どれだけ」渡したいのかを明記しなければなりません。

そして、各相続人の法定相続分がどのくらいあるのかを考えて割り振り、遺留分を下回らないように配分すると、揉めにくい遺言書になるかと思います。

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自筆証書遺言のポイント

自筆証書遺言を作成する際に、気にしておきたいポイントがあります。

作成の目安にもなりますので、参考にしてみて下さい。

 

遺言書のルールに従う

遺言書に決まった書式はありませんが、従わなければいけないルールがあります。

  • 遺言者本人が、自分自身で書く
    財産目録以外はすべて遺言者が記載して下さい。
  • 日付を記載する
    複数の遺言書がある場合、新しい遺言が優先します。
  • 署名をする
    本人と分かれば構いませんが、本名を記載しましょう。
  • 捺印する
    認印でもいいですが、実印が望ましいです。

これらの方式を守らないと、遺言が無効になってしまうので、お気を付け下さい。

 

財産に漏れがないように整理する

自分の保有資産の全てを遺言書へ記載できるように、まずは財産を把握して下さい。

記載例のように「長男〇〇〇〇にその余の全財產を相続させる。」の様な記載をしておくと、記載されなかったものは、全てその者に承継されます。

仮に漏れていた財産があったとしても、指定された者が承継しますので、保険として記載しておくことをお薦め致します。

資産に限らず、負債も相続財産に含まれますが、誰かに多く配分した場合、相続人間には有効でも債権者に対しては主張できません。

資産の例

  • 預貯金
  • 有価証券
  • その他金融資産
  • 不動産
  • 貴金属
  • 自動車
  • 債権
  • 現金

負債の例

  • 住宅ローン
  • その他未払い債務

一身専属的な権利義務

遺言者の一身に専属した(ほかの人に移転しない性質をもつ)権利義務は、相続財産に含むことができません。

遺言者の人格や身分と深く結びつくため、相続財産にならないのです。

請負契約上の債務や公営住宅上の使用権、親権、国家資格や生活保護受給権などがこれに当たります。

 

財産と相手を正確に特定する

不動産や預貯金が複数ある場合に、どれを誰に取得させるのか、誰が読んでも分かる様にしなければなりません。

不動産なら登記簿と同様の記載。

預貯金なら銀行名と支店名及び口座番号の記載。

といった風に明確にしておきましょう。

 

封筒に入れて封印する

封筒に入れなければ、遺言書が有効にならない訳ではありません。

どんな企画やサイズの封筒を使っても構いません。

それでも、封筒に入れて封印した方が間違いありません。

封筒に入れることで、遺言書の変造や偽造を防止できるほか、遺言書を発見した人が勝手に中身を読むことを防ぐことができるからです。

民法では、相続人であっても、法務局に預けていない自筆証書遺言書は、家庭裁判所の「検認」を受けるまで開封してはいけないと決められています。

もし、勝手に開封した場合、5万円以下の過料に処されると規定されています。

検認は、遺言書の状態を確認することで、変造や偽造を防ぐための手続きです。

また、遺言書が封筒に入っていなくても検認は必要です。

封筒に署名押印や検認を受ける旨を書かなくても構いませんが、下記の様に最低限遺言書に押印した印鑑で、押印と封印をしておくといいでしょう。

作成後の保管方法

現在は法務局に保管している制度がありますので、是非利用しましょう。

法務局に預けると、家庭裁判所での検認も不要となりますし、紛失の恐れもありません。

法務局に預けない場合は、相続人に見つけてもらえるように、分かりやすい場所に保管しておく必要があります。

事前に財産を取得する人に伝えておくのも1つの方法です。

 

遺言書を修正したい場合

自分で気軽に書き直しができることが、自筆証書遺言のメリットです。

修正箇所に二重線を引いて訂正印を押して、近くに書き加えることで修正は完了します。

軽微な修正なら、それでいいと思いますが、ややこしくなるようでしたら、以前の遺言書を破棄して書き直した方が、紛らわしくありません。

法務局に預けていたら、新たに作成して、もう一度預けましょう。

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遺言執行者を定めておきましょう

記載例にもありますが、遺言執行者を定めておきましょう。

「遺言執行者」とは、遺言の内容を正確に実現させるために必要な手続きなどを行う人の事です。

相続人の誰かがなっても、他人や弁護士等の専門家でも、誰でも指定することができます。

遺言執行者がいなくても、困ることは少ないのですが、定めてあった方が、色んな手続きが簡単になることが多いです。

 

まとめ

自由に内容を書くことができる自筆証書遺言ですが、その分無効になる可能性があるとも言えます。

万全を期すならば、公正証書遺言を作成した方が間違いありませんが、費用が多くかかってしまうデメリットがあります。

自分の年齢や遺言内容の複雑さなど、どの遺言書のタイプが最適であるのかを判断しなくてはなりません。

どの遺言書を選んでも、間違いであることはありません。

但し、遺言書がなかったばかりに、争いになってしまった。

何てことがないようには、しておきたいですね。

 

 

 

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