相続・遺言・登記

お墓と埋葬が別なら、自宅にお墓を建ててお参りすることができる?

2020年9月4日

自分にとって大切な方が亡くなった場合、住まいの近くにお墓を設けて、お参りしたいと考える方もいます。

家の敷地などにお墓を建てることは、可能なのでしょうか?  

 

お墓に納骨するまで

自分の親族が亡くなった場合に、相続人となる方は、亡くなった方の財産や借金を引き継ぐか放棄するかを選ぶことができます。

しかし、亡くなった方の遺体をそのままにしておくことはできませんので、埋葬してあげなければなりません。  

 

死亡届

人が亡くなってから、親族は原則7日以内に、本籍地、住所地、死亡地、いずれかの市区町村へ死亡届の提出を義務づけられています。

火葬や埋葬は勝手にはできず、必ず決められてある手続きによらなければならず、違反すれば犯罪にすらなります。

遺体を放置すれば、死体遺棄罪にも問われかねません。  

 

火葬許可・埋葬許可

火葬の許可は、葬儀屋さんが代行して手続きをしてくれるので、任せておけばやってもらえます。

しかし、最近は、家族だけで葬儀を行われる方もいらっしゃいますので、葬儀屋さんを使わない場合、自分で火葬埋葬許可を受ける必要があります

墓地や埋葬を自由にできることにしておくと、人の死に深く関わる部分なので混乱を防ぐため、衛生面や宗教的観点、感情面からも支障なく行われるように、法律で規定されています。  

 

墓地、埋葬等に関する法律

その法律を墓地埋葬法といい正式名は「墓地、埋葬等に関する法律」です

。昭和23年に制定されました。 埋葬、墓の移転、承継等には、決まりがあって許可が必要な場合がほとんどです。

しかし、この法律も古いので、埋葬方法や供養の方法等、制定当時には想定もしていなかったことが、近年発生しています。  

 

葬式は義務?

火葬や埋葬は、法律で義務付けられていますが、葬式自体をするかどうかは、遺族が決めることができます。

葬儀を行わずに、直接火葬場に遺体を持む「直葬」も増えているようです。

お寺とのお付き合いも負担に感じる方も増えているので、先祖代々の菩提寺や墓地があっても、自分たちで済ませてしまう方が増えているそうです。

菩提寺で葬儀をする義務や、そこの墓へ納める義務は、法律的にはありません。  

 

遺骨の埋葬

しかし、火葬した後の遺骨は、墓地以外には埋葬できません。

よく人里離れた海山で「散骨」をする話を耳にしますが、本来、墓地埋葬法では、墓地以外の場所で埋葬や遺骨の埋蔵を禁じています。  

 

散骨

過去に散骨は、刑法の「遺骨遺棄」に当たるかどうか問題となったことがありました。

当時の法務省は、「葬送を目的とし節度を持って行う限り、死体遺棄には当たらない」とし、厚生省も「墓埋法は散骨を規制するものではない」という意味の見解を述べたそうです。

しかし、これは今でも推奨しているものではないので、節度を持って行わないと、違法に問われてしまうかもしれません。

市町村によっては、条例で禁止している自治体もあるので、確認は必要です。

散骨は、トラブルの元になるので、周囲へ迷惑をかけない配慮を忘れてはいけません。  

土葬

通常、遺体を火葬して、骨壺に納めた遺骨を墓に埋蔵します。

実は、ほとんどが火葬されますが、土葬も禁じられてはいません。

元々埋葬は土葬のことを意味しています。

ただ、地方自治体の中には、衛生面からも条例によって、土葬を禁じているところがあるので、事前に確認が必要です。  

 

お墓の場所は限られている

また、埋葬する場所も許可を受けないと、勝手にお墓を作って埋葬することは禁じられています。

厳格な決まりがあって、知事の許可を受けた火葬場以外では火葬ができません。

墓地を設けられるのも、知事が許可した場所に限られています。

感情的に自宅の庭にお墓を作り、遺骨を埋葬したい方もいるかもしれませんが、自宅に遺骨を埋葬することは法律上許されません

しかし、お墓の建立だけに限ると、少し話が違ってきます。  

 

自宅にお墓を建てられるか

自宅の庭にお墓を建てることができるなら、墓地や霊園を使用する際の永代使用料や管理費も必要なく、いつでも故人を供養することができます。

結論としては、ご自分の敷地内にお墓を建てることは可能です。しかし、遺骨を埋葬することが禁じられているのです

葬式と同じく、遺骨の埋蔵は法律で義務付けられておりません。

遺骨を墓に納めず、自宅に安置しておくのは問題ありません。

ただ、この場合も散骨と同じく節度を保った方法でないと、問題になりかねません。  

 

自宅墓の問題

上述のように遺骨を埋葬しなければ、自宅の庭などにお墓を建てることは可能ですが、隣近所の方々が気分を害されるかもしれません。

住宅地では特に周囲の方々に配慮しないと、トラブルの元です。

家の中で遺骨を安置するという形で故人を供養することは、「手元供養」として、古くから行われています。

法律上の決まりを守るだけでなく、道徳上も大切に捉えないといけません

他の相続人や親族が反対しているような場合には、特に慎重に考えないといけません。  

 

まとめ

最近では、墓じまいという言葉もよく聞きます。

文字どおり墓をしまうことで、墓石を撤去し、土地も霊園へお返しします。

代々受け継いできたお墓を自分の代で終わらせてしまうので、かなりの決断となります。

しかし、お墓を維持するのも、遠方であったり、維持管理費にお金がかかるので、負担が大きいのは否めません。

後のことを考えると、子供や孫に迷惑をかけたくないという理由で、墓じまいの需要が高まっています。

また、核家族化や少子化のため、そもそも承継者がいない場合もあります。

墓じまいも届出や許可が必要になるのですが、日常ではなかなかすることもない手続きなので、墓じまい代行業者も増えています。

納骨も埋葬も自宅墓も墓じまいも、なるべく故人の意向を大切にして、判断したいですね。

 

   

 

 

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