大切な人が亡くなると、悲しみからしばらくは何もする気力が出ないかもしれません。
しかし、残された家族には、やらなければならないことが次々と押し寄せてきます。
葬儀や納骨のから始まり、様々な届出や申請を役所や関係機関にしなくてはなりません。
それも故人の喪が明けない内に、しなくてはならないことが多いのも事実です。
相続の手続き
少し落ち着いたら、相続の手続きをしなくてはなりませんから、故人の財産には何があるのかを把握しなくてはなりません。
ほっておいても、名義は自動的に変えてもらえませんので、自分で手続きをする必要があります。
名義変更をしなくてはならない手続きを大まかにまとめました。
相続で名義変更などをしなければならないもの
- 預貯金等の解約、名義変更、払戻し
- 株式等の有価証券の名義変更
- 自動車等の名義変更
- 生命保険、損害保険の手続き
- 電気水道ガス等の公共料金の名義変更
- 健康保険、年金の手続き
- 相続税の申告手続き
- 不動産の名義変更
財産として不動産や預貯金、株式、投資信託といった金融商品まで、たくさんありますが、その中でも不動産の名義変更は「法務局」へ申請して行います。
相続登記(不動産の名義変更)とは
不動産の名義変更は、売買や贈与といった原因によって、所有権移転の手続きをして行いますが、中でも相続を原因として不動産の所有権移転登記を行う場合を一般的に「相続登記」と呼びます。
金融機関で預貯金の名義変更をする手続きとは異なり、必要となる書類が多く、法律で形式が定められていますので、そのルール通りに申請しなくてはなりません。
一般的には、登記の専門家である司法書士に依頼して、相続登記をしてもらうことが多いかと思いますが、司法書士に依頼しないでご自身で相続登記をする方もおられます。
本人申請が原則
司法書士が本人に代わって代理人として申請することに対し、相続人が自分で登記申請することを「本人申請」と呼びます。
実は、登記に限らず、訴訟や税務といった様々な手続きは、本人申請が原則とされていて、司法書士等へ依頼をするのは例外と考えられています。
つまり、制度としては自分で申請することを原則としていますが、難しい場合に専門家へ依頼できるように、国家資格者の制度が設けられているのです。
但し、間違った登記申請をしてしまったり、勝てるものも勝てなかったり、きちんと申告できずに余分な税金を支払ってしまうようなリスクが内在していることも否めません。
本人申請が増えている
少しそれましたが、話を相続登記に戻しますと、時間や手間はかかるかもしれませんが、インターネットが普及してからは、情報も入手しやすくなっていますので、以前よりも相続人が自分で登記申請をするケースも増えています。
また、相続登記は、他の売買等による名義変更の様に、買主と売主が、金銭の授受と名義変更を一体として行わなければならない、利害関係がある登記と異なり、自分の責任の範囲で登記申請をすることができます。
本人申請に不向きな場合もある
とは言え、法務省のホームページ等に記載がある一般的な手続きでは、対応できない困難な登記事例もあります。
時間や労力を費やしてもできない場合もありますので、そのような場合は、初めから司法書士に依頼した方が安心です。
しかし、一般的な相続なら、そんなに登記申請は難しくありません。
その為に、まずは自分で登記申請ができる場合か、そうでないかを判断しなくてはなりません。
自分で相続登記ができるかどうかを判断する
今回から、相続登記の仕組みを御説明していきます。
なるべく分かりやすく解説していくつもりですが、最後まで読んでみて、これなら自分でもできそうだなと思うことができた方は、チャレンジしてみる価値があります。
反対にちょっと難しいし、めんどくさいなって思われた方は、お近くの司法書士に依頼した方がいいかもしれません。
自分のかける労力と時間分の価格が、司法書士にかかる費用と同じくらいだと思ってください。
相続登記を自分でするメリット・デメリット
具体的な内容に入る前に、第1回目の今回は、相続登記を自分でする場合のメリットとデメリットを御紹介させていただきます。
メリット
- 費用が安くすむ
- 相続に詳しくなれる
- 登記制度に詳しくなれる
- 身近な人にアドバイスできるようになる
デメリット
- 時間がかかる
- 労力がかかる
- 勉強しないといけない
- 間違った登記をしてしまうかもしれない
- 精神的な負担になる
相続登記を自分でやってみようと思う方のほとんどが、費用面からだと思います。
司法書士報酬も事務所によって違いはありますが、その費用を頑張って節約してみようという方には、本人申請をするメリットが大きいと思われます。