起業の雑学

合同会社のメリットデメリットからよく分かる設立登記手続きと流れ

 前回、株式会社の設立登記についてご説明しました。今回は、もう少し手続きが簡単な「合同会社」を設立する際に、必要となる書類や登記手続きの流れをご説明致します。

Ⅰ.「創業の形態(個人、法人)と手続」
 1.個人と法人の違い
 2.個人事業主のメリット・デメリット
 3.法人のメリット・デメリット
 4.個人事業の方がよい場合
 5.起業の手続き
 6.起業に許認可が必要な場合
 7.法人で起業する場合、どの形態を選んだらよいか
 8.株式会社設立登記の流れ
 9.合同会社設立登記の流れ

 Ⅱ.「商法、会社法の基礎」

 Ⅲ.「商取引と契約」

 Ⅳ.「身近な法律問題とその事例」

合同会社とは

 まず、「合同会社」とは、平成18年に新会社法が施行された際に創設された新しい会社形態です。

 その趣旨を「当事者間で最適な利害状況を自由に設定することを可能とすることにより、その事業の実施の円滑化を図るという会社類型」として創設されました。従来の株式会社と同様な有限責任でありながら、内部的規律を定款で自由に設計することができる会社類型で、実質は「人的会社」「物的会社」の中間とも言える会社形態です。

「人的会社」と「物的会社」

「人的会社」とは、人間関係が親密で、社員の個性や資質が重要視されている会社の事をといいます。
例:合名会社、合資会社
「物的会社」とは、社員や出資者との関係や信頼関係が希薄で、その代わりに会社の財産などといった物が重視されている会社のことをいいます。
例:株式会社、合同会社

法律上の概念でないので、単なる分類の仕方と思って下さい。

 元々投資家の出資を受け入れるベンチャー企業の立ち上げや、複数の会社が出資をして共同事業を行うための合弁会社として利用されることが想定されていましたが、実際の運用としては、設立費用を節約して起業したい場合や同族会社の設立などに利用されています。

合同会社の特徴

 合同会社は、出資者(社員)自らが経営にあたり業務を執行します。その為、迅速で機動的な経営をすることができます。その反対に株式会社は、所有者である株主が自らが経営するのではなく、 選任された役員(取締役)に経営を任せる形態であり、会社の所有と経営が分離していない点が、合同会社の大きな特徴と言えます。会社の資本に出資をした人が、「株主」であり「社員」といった会社のオーナーになります。

 また、「合同会社」は、会社組織が単純であるので、会社の運営に対する法規制が少く、個性的な経営体制や機関設計を組むこと認められています。

合同会社のメリット・デメリット

メリット

経費が安い

 登録免許税が株式会社よりも安く、公証役場での定款認証も必要ないので、設立登記費用を抑えることができます。

株式会社合同会社
収入印紙代     4万円
定款認証の手数料 約5万円
登録免許税    15万円
合計約24万
収入印紙代     0円
定款認証の手数料  0円
登録免許税    6万円
合計6万円
※株式会社も定款を電子認証した場合は収入印紙代が不要になります。

 登録免許税と定款認証料の2つの合計額が約18万円程もあるのでけっこう差が大きいため、一般的な創業時にはかなり助かると思われます。

現物出資の規制がない

 現金以外の出資が一定の額を超えた場合でも検査役の調査が不要です。

「現物出資」とは、金銭以外の財産つまり「動産」「不動産」「債権」「有価証券」「無体財産権(特許権、実用新案権)」等で出資することをいいます。
金額にもよりますが、要件がいくつかありますので、現金よりは手軽に利用できません。

機関設計を定款で自由に定めることができる

 株式会社と違い、監査役や会計監査人など様々な機関を置く必要がありません。配当や残余財産の分配なども自由に定めることができます。

役員任期がない

 役員の入れ替えがなく変更しなければ、変更登記も不要です。株式会社では、最長10年まで任期を伸ばせますが、それでも10年ごとに役員重任登記をしなくてはなりませんので、経費がかかります。

法人も業務執行社員となれる

 株式会社では、法人は取締役にはなれませんが、合同会社の代表社員は個人に限らず、法人がなることも可能です。ただし、実際に業務を遂行する人として「職務執行者」の選任が必要になります。

決算手続、決算公告の義務がない

 株式会社は、決算公告義務があり会社の決算内容を広く通知する義務がある為、怠ると罰則があります。広告も費用がけっこうかかりますので、合同会社に決算公告義務のないのは大きなメリットです。

 ただし、以下のような場合は、官報で公告する必要があります。

  • 合併公告
  • 吸収分割公告
  • 新設分割公告
  • 共同新設分割公告
  • 組織変更公告
  • 資本金の額の減少公告
  • 資本金及び準備金の額の減少公告
  • 準備金の額の減少公告
  • 解散公告

株主総会や取締役会を開催する必要がない

 株主や取締役を招集する手続きを省けるため、迅速な意思決定と機動的な経営ができるようになります。

会社の規模が大きくなっても、監査役等を設置しなくてもすむ

 株式会社では、大会社になると監査役を必ず置かなくてはなりませんが、合同会社では設置義務がありません。

「大会社」とは、資本金の額が5億円以上又は負債の額200億円以上である会社のことをいいます。

大会社は、事業規模が大きいため、株主や債権者といった利害関係人も多いので、より厳格な義務が課せられています。
具体的には以下の通りです。

  1. 監査役会・委員会の設置義務
  2. 会計監査人の設置義務
  3. 業務の適正を確保するための体制の整備
  4. 損益計算書又はその要旨の公告義務
  5. 連結計算書類の作成義務(有価証券報告書提出会社に限る)

純資産額が300万円を下回っても配当ができる

 株式会社は、債権者保護の観点から、純資産の額が300万円を下回る場合には剰余金の配当ができませんが、合資会社なら可能とされています。

デメリット

信用度が低い

 創設されてから決行立ちますが、今なお認知度が低いため、取引先からの信用も低いままです。やはり株式会社の方が安心感を抱く傾向があります。

経営が人間関係に左右されやすい

 議決権が社員一人につき1議決権のため、人間関係が悪化した場合に円滑な経営が難しくなります。
※一人会社なら問題ありません。

権利譲渡・事業承継が難しい

 持分(出資)の譲渡に総社員の同意が必要とされているので、社員=役員の合同会社では、代表者の交代を認めてもらいにくい場合があります。
※一人会社なら問題ありません。

重要な決定事項に「総社員の同意」が必要となる。

 重要な変更をしたい場合でも定款変更には、総社員の同意が必要とされているので、に迅速な行動ができないかもしれません。
※一人会社なら問題ありません。

定款の作成

定款の記載例

必要最小限な定款の例です。

 定款の規定を自由に定められる反面、慎重に内容を定める必要があります。

絶対的記載事項

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 社員の氏名又は名称及び住所
  • 社員の全部が有限責任社員であること
  • 社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準

相対的記載事項

  • 会社の内部関係に関する事項であって、会社法の規定の特則を定めるもの
    例:持分譲渡の特例、定款変更の特例、社員退社の特例
  • 業務を執行する社員に関する定め
  • 民法の規定の準用に関する別段の定め
  • 会社を代表する社員に関する定め
  • 社員の退社の事由
  • 計算書類の閲覧に関する定め
  • 利益の配当に関する定め
  • 損益分配の割合に関する定め
  • 出資の払戻しに関する定め
  • 存続期間、解散の事由
  • 公告方法
  • 清算人に関する定め
  • 代表清算人に関する定め
  • 残余財産に分配の割合に関する定め
  • 清算会社の帳簿資料を保存する者に関する定め

任意的記載事項

 事業年度、社員総会に関する規定等

登記申請手続

 登記手続きが完了すると会社の戸籍のような証明書である「履歴事項証明書」いう登記簿を取得できるようになります。

登記期間

 合同会社は株式会社と違って、登記期間の定めはありません。

登記事項

1商号
2目的
3本店及び支店の所在場所
4資本金の額
5定款で会社の存続期間または解散事由を定めたときはその定め
6業務執行社員の氏名、業務執行社員が法人の場合はその名称
7代表社員の氏名(名称)および住所
8代表社員が法人である場合は、その社員の職務執行者の氏名および住所
9公告方法についての定め
(公告方法についての定めがないときは、官報で公告する旨)

添付書面

 合同会社の設立登記申請書には、以下の書面等を添付しなければなりません。株式会社と比べてかなり簡素です。

定款
業務執行社員の一致を証する書面本店所在場所および資本金を決定したことを証するために添付します。もし、代表社員を定款で定めずに、業務執行社員の互選により定めた場合には、代表社員を決定したこと証する書面にもなります。
代表社員の就任承諾書代表社員を、定款の定めに基づく業務執行社員の互選によって定めた場合に添付します。定款で代表社員を定めた場合や、社員が1人の合同会社の場合には、添付は不要となります。
業務執行社員が法人である場合は、その法人の登記事項証明書その存在を証明します。業務執行社員の本店と登記を申請する法務局の管轄が同じ場合は不要です。
代表社員が法人である場合は、その法人の業務執行に関する決定機関(取締役会等)において職務執行者を選任したことを証する書面および職務執行者の就任承諾書具体的に誰が職務を執り行うのか証明します。
出資財産の払込みおよび給付があったことを証する書面金銭の払込があったことを証する書面
10資本金計上証明書出資に係る財産が金銭のみである場合の設立登記に際しては不要
11印鑑証明書代表社員が必要
12委任状司法書士に依頼する場合
13登録免許税登記申請に合同会社設立登記の登録免許税として6万円納めなくてはなりません
資本金が大きい場合は、更にかかる場合があります
資本金の1000分の7か6万円どちらか高い方の金額になります

 内容によっては、他の書類が必要になる場合もありますが、一般的な組織設計の場合、上記の書類で設立登記が可能です。

「業務執行社員」と「代表社員」との違い

業務執行社員と代表社員との違いは、代表権があるかないかの差です。業務執行社員は代表権を持ちませんが、代表社員は代表権を持っています。業務執行社員と代表社員は、別々の人が就任することもできますし、ひとりが兼務することもできます。役員が一人しかいない場合は、一人が兼ねることになります。

 定款に記載しなかった場合に、他の決定書や同意書で補う場合もあります。

 詳しくは法務局のホームページに申請書から添付書類までひな形が掲載されていますので、そちらをご覧下さい。

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#anchor3-1

印鑑届出と印鑑カードの交付申請、会社設立日

 この後の会社実印の届出から印鑑カードの取得方法。設立日から実際の申請方法は、株式会社の登記申請手続きと同様なので、そちらをご参照下さい。

http://highaspirations712.com/2020/05/28/registration/

 株式会社と比べてコストがかからず、手続きも割と簡素なので、勉強しながら自分で登記完了まで進めると結果として多方面に詳しくなれるので、今後の会社運営を考えると自分でやり切れれば、貴重な経験になると思います。ただ、将来を見据えた機関設計や税務的な確認はしておかなくてはいけないので、司法書士や税理士に依頼された方が安心かもしれません。

合同会社について理解を深める書籍

 起業に合同会社を選択され、自分で運営していこうという方に読んで欲しい本があります。ただし、実務家向けでかなり内容がハードです。でも、分からない所を飛ばしても読み切ることができたならば、合同会社の理論がある程度腹に落ちていると思います。株式会社だと内容が果てしないのですが、合同会社限定ならオススメです。

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 さすがにそこまではいいや、っていう方へは、こちらの方がかなり分かりやすいと思います。設立登記の手順も詳細に書かれています。

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 会社には他にも「合名会社」「合資会社」がありますが、現在では、あまり選択することがありませんので、今回でⅠ.「創業の形態(個人、法人)と手続」編は終了と致します。次回からは、Ⅱ.「商法、会社法の基礎」編に入り、その第1回目は「商法の規定」について御説明致します。

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