相続・遺言・登記

直系尊属や兄弟姉妹の相続分と相続人にならない時なれない時

2020年7月15日

相続人の中でも、子どもがいない場合に相続人となる「直系尊属」「兄弟姉妹」について。

そして、推定相続人が相続人にならない場合、なれない場合について解説致します。

 

直系尊属

直系尊属の「直系」とは、縦の血縁関係を指し、「尊属」とは上への遡っていく系譜のことをいいます。
具体的には、直系尊属として、父母、祖父母、曾祖父母を指しており、下図のなかでも本人や配偶者よりも上の位置のある方を「直系尊属」と呼びます。

亡くなった本人に子どもがいない場合には、直系尊厲と配偶者が相続人となります。

その相続分としては配偶者3分の2直系尊属3分の1と定められています。

亡くなった方に配偶者も子供もいない場合には、直系尊属がすべて相続します。

 

直系尊属が複数いる場合の相続の順番

直系尊属が相続する場合でに、同じ親等の相続人が複数いる場合には、人数割りになります。

下の図でいうと、父方の祖母と母方の祖母が各2分の1ずつ相続します。

親等が違う直系尊属がいる場合には、近い親等の尊属が先順位で相続します。

下の図でいうと、祖父が健在であっても、母だけが亡くなった本人の相続人となります。

父母(1親等)が死亡していても、祖父母(2親等)が生きている場合には、祖父母も直系尊属であるので、順位的に兄弟姉妹は相続人となりません。

直系卑属(子や孫)も配偶者もいない場合に、父母と祖父母がいるときは、父母のみが相続して、祖父母が相続することありません。

また、母は健在だけども、父が既に死亡していた場合に、亡くなった父方の祖父母がいたとしても、下図のように母が全て相続し、祖父母が相続することはありません。

兄弟姉妹

亡くなった本人に子どもがおらず、父母や祖母といった直系尊属も既に死亡していた場合には、被相続人の兄弟姉妹と配偶者が相続人となり、法定相続分は、配偶者が4分の3兄弟姉妹が4分の1と定められています。

直系尊属も全員先に死亡していた場合には、兄弟姉妹が全部を相続することになります。

 

半血の兄弟姉妹

親が離婚して再婚をすると、兄弟姉妹間で片方の親だけを共通する兄弟になることがあります。

両方の親が同じ全血の兄弟姉妹と、片方の親のみが同じ半血の兄弟姉妹では、相続人の地位に変わりはありませんが、その法定相続分は、全血の兄弟姉妹の法定相続分にくらべ、半血の兄弟姉妹は2分の1と決められています。

下の図で相続分を見てみると、長女と父母が共通している長男が全血。

再婚後の生まれた次女は、父だけを共通しているので半血となります。

よって、亡くなった長女の法定相続分は、長男が3分の2。次女が3分の1となります。

相続人にならない場合

相続放棄

相続は、亡くなった方と一定の関係にある者に財産を承継させる制度ですが、財産と負債を分けておりません。

亡くなった方に莫大な借金があった場合にも、必ず相続をしなくてはならないとしてしまうと、かなり酷な時もあります。

そんな時は、「相続放棄」をすることで損害を被ることを回避することができます。

相続を放棄をすると、法律上は初めから相続人にならなかったものとみなされます。その為、後述する「欠格事由」「廃除」と異なり、代襲相続(その人に代わって子が相続する制度)が生じることはありません。

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述し、家庭裁判所が申述を受理することによって成立します。

相続放棄をした場合でも、戸籍に載るわけではありませんので、債権者に相続人ではないことを知らせたり、遺産分割の為に、家庭裁利所が発行する「相続放棄申述受理証明書」によって証明することになります。

亡くなってから3か月以内という期間は、結構短いものです。

何もしないで3か月を経過してしまうと、相続を認めたという「法定単純承認」という効果が生じてしまいます。

 

熟慮期間

相続人の確定や相続財産の調査をするのに時間が足りないということもあるので、家庭裁判所に申し出て、その期間を延長することができます。

延長の限度も3か月と定められていますが、放棄か承認の判断がつかない場合には、再度延長を申出ることができます。

故人の供養や手続きをしていたら、気が付くと3か月経っていたなんてことにならないように注意が必要です。

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相続人になれない場合

廃除

推定相続人の廃除とは、推定相続人に「ある行為」があった場合に、家庭裁判所に請求することによって、その相続資格を喪失させる制度でです。

また、遺留分もなくなります。

生前に行うことも遺言で行うこともできます。

 

廃除事由

下記自由があった場合に、請求できるとされています。
1.推定相続人が被相続人に対して虐待をしたとき
2.推定相続人が被相続人に重大な侮辱を加えたとき
3.推定相続人に著しい非行があったとき

一般的な意味と同じですが、虐待とは、肉体的、精神的に、耐え難い苦痛を与えることをいい、侮辱とは、人の名誉や感情を害するような言動を行うことをいいます。

廃除の対象となるのは、「遺留分を有する推定相続人」とされていて、配偶者、子、直系尊属のことを指し、兄弟姉妹は当てはまりません。

被相続人が兄弟姉妹に相続させたくないのであれば、遺留分がないので、兄弟姉妹に残さない遺言書を書いておけば、相続することはできません。

廃除が相続放棄と異なる点として、廃除された者に子がある時は、その子が代襲相続人となります。また、相続人から廃除されたことは戸籍にも記載されます。

 

相続欠格

相続放棄や推定相続人の廃除と違い、民法は一定の事由がある場合には、当然に相続資格を失うとしています。

特別に申立をしたり、裁利上の宣言をしなくても、不当な方法で自らの相続財産を増加させるような一定の行為をした者から相続人の資格を剝奪する制度です。

相続欠格は、廃除と異なり戸籍上に欠格事由である旨の記載はされません。

 

欠格事由

民法では、下記の行為をした者を相続人の欠格事由としています。

1.故意に被相続人、自分以外の相続人を死亡させ、または死亡させようとして刑に処せられた者

2.被相続人が殺害されたことを知りながら、告訴、告発をしなかった者
ただし、その者に是非の弁別がないとき(まだ子供の場合など)、または殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族(子、孫、親、祖父、祖母)であった場合は、例外です。

3.詐欺や強迫により、被相続人が相続に関する遺言を作成・撤回・取消し・変更することを妨げた者

4.詐欺や強迫により、被相続人に相続に関する遺言を作成・撤回・取消し・変更させた者

5.相続に関する被相続人の遺言書について偽造・変造・破棄・隠匿した者

以上のような相続欠格事由にひとつでも該当することがあれば、法律上、当然に相続人の資格が剥奪されることになり、相続人ではなくなります。

廃除と欠格の違いを表にしてみました。

 推定相続人の廃除相続欠格
被相続人の意思表示必要不要
家庭裁判所の審判必要不要
代襲相続ありあり
戸籍への記載ありなし

 

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