起業の雑学

契約書や合意書の違いと押さえるポイントやリーガルチェックの必要性

 前回契約書を備えておくことは、リスク管理の為に必要であるとお伝えしました。契約書の内容や形式が法的に妥当で問題がないのかチェックする際には、いくつかのポイントを押さえることが重要です。

自分でのチェックが不安な方は専門家へ任した方が確実です。「契約書の作成・チェックの依頼」

契約書のチェックポイント

具体的な合意内容を明示してあるかどうか。

 契約の目的、趣旨、範囲などを明確にしましょう。双方が契約内容に誤解が生じないように表現をしっかり確認しなくてはなりません。また、契約内容に見落とされている項目がないかどうかもチェックが必要です。

 また、主語述語がはっきりと記載されていないと、どちらが主体となっているのか分からなくなってしまうときもありますので、必ず主語を入れましょう。

目的を達成するための条件が明確かどうか。

 契約内容を明確にするために、期限や数量などの条項をチェックします。一般的に下記の条項を明確にして契約書に記載されます。

「契約で明確にしておくべき条項」

  • 目的物は何か
  • 価額や期限、その方法
  • 解除できる場合
  • 損害賠償請求の条件、額
  • 危険負担をどちらが負うか どこで分けるか
  • 担保責任の対象、期限
  • 保証人の生む
  • 費用負担はどちらがするか
  • 契約期間の明示
  • 期限の利益喪失条項はあるか
  • 紛争時の裁判管轄はどこか
  • 秘密保持義務が必要なないようか
  • 末尾の協議条項で対応できるか

 但し、いくら明確に記載がしてあっても、以下のような条項は無効となります。

「契約書に記載してあっても無効な条項」

  • 強行規定に反する契約(民法商法等から変えられない規定)
  • 公序良俗に反する契約(社会一般の秩序や倫理道徳から外れるもの)
  • 不法行為を内容とする契約や個人の権利自由を不当に制限する契約

約束が守られない場合にはどんな措置を取れるか。

 契約内容が不履行の時にどんなペナルティが課されるのか事前にチェックします。もしもの時に損害賠償請求をするためには、違約金の条項は大切です。相手方の契約書には、自己にとって不利な項目がある可能性もあります

契約が対等ではない場合はその度合いを確認。

 当事者の一方が自己の利益ばかり考えると、契約内容が平等にならないことが多いので、責任や義務が、一方的に不利益になり過ぎていないかどうかの確認は必須です。重要なのは相互の利益バランスを取ることで、適切な利益バランスの取れた契約書を作成することが、今後の信頼関係を構築していくことにも繋がります。

形式に不備がないかどうか。

 契約書に署名押印を始め、割印や部数、収入印紙が貼ってあるかなどの要件が満たしているかどうかの確認もしなければなりません。

信頼関係と契約内容の兼ね合いを計る。

 物々しい契約書にしなくても、高い信頼関係にある当事者同士の契約ならば、「確認書」、「合意書」、「覚書」、「念書」、「誓約書」など簡素な方が上手くものごとが運ぶときもあります。以下が大まかな違いです。

「確認書」「合意書」
取引とはいえないような事柄において双方の合意した内容を明らかにする目的で作成されます。

「覚書」
事実認識や契約条項の解釈などを補足する場合や、契約当時より時間の経過によって変わった事など(社名や住所)を確認する場合に作成されます。

「念書」「誓約書」
双方の合意ではなく、片方の者が相手方へ一方的に約束する内容を証するものです。署名押印は片方のみが行います。法的拘束力は弱く、証拠としての意味合いが強いです。

契約書の注意すべき表現の読み方

 商取引で交わされる契約書は、さまざまな利害関係人が存在し、取引金額も大きくなることが多いため、何かトラブルがあった場合のリスクは必然的に高くなるといえます。後に裁判の証拠として使われることも想定されますので、細かい文言にも慎重にならなくてはいけません。以下に、いくつか注意すべき言い回しの例を挙げてみます。

「…とみなす」

 法律文書では、「みなす」と「推定する」は使い分けがされています。例えば、「Aという事由があった場合、重大な契約違反と推定する」と書かれていれば、Aという事態が重大な契約違反にあたらないケース(「不可抗力だった」とか「やむを得なかった」など)であったことを反証する余地があるのに対し、「Aという事由があった場合、重大な契約違反とみなす」と書かれていれば、Aという事態がいったん生じれば、自動的に重大な契約違反となってしまい、反証が許されないという違いがあります。

 したがって、契約書に「…とみなす」という表現が出てきたら、それが当事者(自分の側)にとって不利益に働かないかどうかよく検討する必要があります。

 たとえば、相手方の用意した契約書案に「重大な契約違反があれば甲は乙に催告することなく直ちに契約を解除することができる。下記に列挙する事由は重大な契約違反とみなす」といった条項があれば、列挙事由の中の軽微なものはみなし規定から外し、特に重要なものに絞るという交渉をすべきかもしれません

「…するものとする」

 これも契約書ではよく使われる表現ですが、日本語らしい曖昧な表現であり、注意が必要です。例えば、「…しなければならない」と書いてあれば、「することが義務である」(義務規定)のに対し、「…することができる」と書いてあれば、「することもできるし、しないこともできる」(任意規定)という意味です。

 では、「…するものとする」はどうかと言えば、これは基本的には義務規定ということになります。「…しなければならない」よりも弱い表現ではありますが、ニュアンスの違いだけで、しないことで場合によってはペナルティを受ける可能性があるので、関連条項をよく見る必要があります。

「…については協議により定める」

 この表現が使われるのは、契約上明確にしておきたくない事項がある場合です。例えば、ケースバイケースで対応するのが望ましい場合や、現時点で合意に至らなくとも特に不都合がない場合などです。しかし、この文言を安易に多用すると、契約書を作成する意味が失われる可能性があります。なぜなら、この条項は、協議することだけを定め、その他は何も決まっていないことを意味するからです

解釈に誤解のない表現を

 政治の世界では「本当に大事な約束は紙に書かない」と言われるらしいですが、商取引では大事なことはすべて書面化しておかないと、トラブルになったときに「言った言わない」の水掛け論になってしまうおそれがあります。

 また、せっかく契約条項を書面化しても、表現が曖昧だったり、文言に明確さが欠けていれば、後日の紛争の種にもなりかねません。関係性が良好に動いているときは、契約書に目を通す必要さえないかもしれませんが、いったんトラブルが生じた時には、契約書の文言で自己に有利な主張ができないかどうかを必死に探すことになります。

 そういったときに備えて、契約書の表現はどちらでもとれるような曖昧な解釈の余地を作らない表現にすることと、自己に不利益な規定の仕方は極力避けるようにすることが大切です。

 なかなかチェックはしても大丈夫か不安が拭えないこともあります。そんな時は、専門家に任せてしまうのも一つの方法です。

 次回は、トラブル発生時の為に契約書へ記載しておくべき「リスク条項の必要性」を説明致します。

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