相続・遺言・登記

【自筆証書遺言書の文例】相手が先に亡くなる場合に備えた予備的遺言

2020年9月21日

自分にもしものことがあったら、家族や大切な人に財産を渡したい。

そう考えるのは、当然のことです。

しかし、自分より先に財産を渡す相手が亡くなってしまったら、どうなるのでしょうか。

そういった場合に備えて遺言を残すことも可能です。  

 

相続人が自分より先に亡くなるかもしれない場合

遺言者が亡くなる前に、財産を渡す相続人が死亡していたときは、その遺言書は効力を発揮できません。

遺言者と相続人が、同時に亡くなっても同様です。

 

遺 言 書

遺言者〇〇〇〇は、次のとおリ遺言する。

第1条  遺言者は、その所有する次に掲げる不動産を含む一切の財産及び債務を、遺言者の妻〇〇〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に相続させる。
(1)土地
 〇〇県〇〇市〇〇1丁目2番3
 宅地 〇〇〇.〇〇平方メートル
(2) 建物
 〇〇県〇〇市〇〇1丁目2番地3 家屋番号〇番
 鉄筋コンクリート造2階建 居宅
 1階 〇〇.〇〇平方メートル
 2階 〇〇.〇〇平方メートル
(3)〇〇銀行〇〇支店の遺言者名義の預金全部

第2条 遺言者は、妻〇〇〇〇が遺言者よリ先に、又は遺言者と同時に死亡したときには、前条掲記の財産を遺言者の長男〇〇〇〇に相続させる。

第3条 遺言執行者として前記、妻〇〇〇〇を指定する。なお、遺言者は、前条の事態が生じたときには、本遺言の執行者として、長男〇〇〇〇を指定する。

2 遺言者は、前項掲記の遺言執行者に対して、本遺言執行のための不動産、預貯金、株式等の名義変更、解約及び換金等の権限、並びに貸金庫契約、保護預かり契約に関する開扉、解約、内容物の受領に関する権限(各手続き又は行為をするにあたり相続人の同意は必要としない)、その他本遺言を実現するために必要な一切の権限を付与する。

令和〇〇年〇〇月〇〇日    
〇〇県〇〇市〇〇1丁目2番3号
遺言者(署名)     印 

遺言書に別途、他の相続人へ財産を渡す記載があった場合には、その部分は有効に効力を発揮できます。

亡くなっていた相続人に譲るはずだった財産は、指定のない財産となるので、その帰属は、相続人間の遺産分割協議によって決められます。

それでは、折角遺言書を書いたのに、紛争が避けられそうもない場合もあるので、予備的に次の相続人を指定しておくことができます。

このような遺言のことを「予備的遺言」といいます。

遺言執行者も財産を取得する人自身に指定しておいた方が、円滑に手続きが運びますので、予備的に指定しておくとよいでしょう。  

 

夫婦がお互いに財産を相続させたい場合

夫婦が互いに財産を築きあった場合に、まずは残された配偶者に財産を残し、ゆくゆくは子ども達へ残したいと考える方もいらっしゃいます。

しかし、遺言書の方式として、1つの遺言書に共同して2名以上が残すことはできないとされています。

これに違反した証書は、全部無効となります。

 

遺 言 書

遺言者〇〇〇〇は、その妻〇〇〇〇に、遺言者の所有する後記不動産、預金、現金及びその他一切の財産を相続させる。

財産の明細・・・

遺 言 書

遺言者〇〇〇〇は、その夫〇〇〇〇に、遺言者の所有する後記不動産、預金、現金及びその他一切の財産を相続させる。

財産の明細・・・

上記記載例のとおり、お互いに相手へ譲る遺言を個別に作成しなければなりません。

理由として、遺言は本人の自由な意思で書かれるもののはずが、同一の遺言書では、相互に影響し合っていて、真意か否か疑問が生ずる為とされています。

共同の内容で遺言が書かれていると、片方しか自書していなくても、両方とも無効とした判例もあります。(最判昭56. 9 .11判時1023・48)

また、上記の予備的遺言を組み合わせて、お互いに残しておくと特定の子供へ残すこともできます。  

 

指定した相続人が亡くなり他人へ遺贈する場合

予備的遺言は、相続人に限らず、相続権を持たない第三者へも渡すことができます。

 

第〇条 遺言者は、妻〇〇〇〇が遺言者よリ先に、又は遺言者と同時に死亡したときは、遺言者は、前条掲記の財産を〇〇〇〇(住所・氏名・生年月日)に遺贈します。

子供がいない夫婦が、世話になった方へ財産を渡したい場合に利用することができます。

自分の兄弟姉妹しか相続人がいない場合には、他人へ全ての財産を遺贈しても、兄弟姉妹には遺留分がないので、相続人から第三者へ請求されることもありません。  

 

ポイント

人が亡くなる順番を自分で決めることは、できません。 自分が遺言書を残しても、財産を渡したい相手が先に亡くなることは、珍しくないのです。

  • 遺言者が高齢で、子供も高齢になっている場合。
  • 遺言者と年齢の近い人に財産を渡したい場合。

様々なケースが想定されますが、上記の場合には、予備的に年齢の若い方を指定して置いた方が、折角の遺言が失効しません。

想定と現実が異なった時に、遺言者が再度遺言書を作成できる状態にあるとは限りませんので、先々を見据えた遺言書の作成が大切です。  

 

 

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