相続・遺言・登記

戸籍事項証明書を中心とした、相続登記に必要な書類の具体的な集め方

2020年8月5日

登記事項証明書や登記情報を取得した後の「必要書類の集め方」について解説致します。

 

登記申請に必要な書類

登記情報を確認して、権利関係を把握できた後は、いよいよ登記申請自体の準備に入ります。

登記申請には、様々な書類を添付しなければなりませんが、大きく分けて作成する書類と集める書類に分かれます。  

作成する書類

場合によって、内容が異なりますが、自分で作成して、登記申請に使う書類は、下記のとおりです。

登記申請書登記の目的や原因など登記簿に記載される事項を記載します。
相続関係説明図被相続人と相続人の関係を分かりやすく図にしたものです。
遺産分割協議書遺産分割協議を行った場合には、これを証するために添付します。
委任状代理人に依頼する場合に必要です。

 

集める書類

こちらも場合によって、種類が変わりますが、市役所や区役所等で集めなければならない書類は、下記のとおりです。

一般的に登記では、3ヶ月の期限を求められている書類もありますが、相続登記においては、期限のある書類はありません。

遺言書 自筆証書遺言は検認が必要です公正証書遺言の場合や法務局に預けていある場合は、再発行が可能です。
亡くなった方の戸籍(除籍)謄本 遺言書がない場合は、出生から死亡までの全て 遺言書がある場合は、死亡時の分のみ市区町村役場で取得
亡くなった方の住民票除票 (又は戸籍の除附票)市区町村役場で取得
相続人の戸籍謄本 遺言書がない場合は、相続人全員分必要 遺言書がある場合は、名義を取得する方の分のみ市区町村役場で取得
名義を取得する相続人の住民票 (又は戸籍の附票)市区町村役場で取得
相続人全員の印鑑証明書 (遺産分割協議の場合)市区町村役場で取得
不動産の固定資産評価証明書市区町村役場で取得
収入印紙(登録免許税納付用)郵便局又は法務局等

 

戸籍を中心とした必要書類の集め方

作成する書類と集める書類を御確認いただきましたが、書類を作成するためには、集める書類がそろってからの方が、間違いありません。

相続人に漏れがあると有効な遺産分割協議となりませんし、遺言書の存在も無視できません。

まずは、相続人を確定させるために、戸籍謄本等の相続にかかる公的証明書を集めます。

戸籍とは?

「戸籍」とは、日本国民の親族関係を登録するもので、「夫婦および夫婦と氏を同じくする未婚の子どもを単位としてつくられる身分関係の系譜」です。

例えば、出生、結婚、養子縁組、離縁、死亡といった身分が変動する大切な事項が戸籍に記戦さます。

戸籍を見れば、その人がいつ生まれて、誰と誰の子どもで、誰と結婚して、離婚して……ということが分かり、人生の経歴が書かれています。

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戸籍の種類

戸籍にも種類があります。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集めるときには、戸籍謄本だけでは足りません。

出生まで遡っていくと、他の種類の戸籍も必要になって来ます。

戸籍謄本 戸籍全部事項証明書現に効力を有している証明書
除籍謄本 除籍全部事項証明書死亡や婚姻などで人が全て抜けて閉鎖された証明書 一部の人しか籍を抜け出ていない戸籍は、除籍ではありません 死亡、婚姻、転籍等により除籍となります
改正原戸籍戸籍法の改正により様式が変更された前のもの 法律の改正により閉じられると改正原戸籍となります 正式には「かいせいげんこせき」と読みますが、「かいせいはらこせき」とも呼ばれています

 

戸籍や住民票の取得方法

戸籍等を取得するには、その人の本籍地の市区町村役場へ請求します。

住民票を取得するには、その人の住所地の市区町村役場へ請求します。

法律の規定により、請求できる人や手数料、必要書類が決められています。  

 

戸籍の請求ができる人

戸籍に記載されている人
その配偶者または直系の親族
相続人等の自己の権利行使、又は義務の履行のために必要な人
上記の者より委任をうけた人(代理人)

住民票の請求ができる人

住民票に記載されている人
相続人等の自己の権利行使、又は義務の履行のために必要な人
上記の者より委任をうけた人(代理人)

取得費用

戸籍謄本1通450円
除籍謄本・改正原戸籍1通750円
住民票1通300円前後

必要書類

運転免許証等の本人確認書類本人であることの証明
戸籍謄本等被相続人の相続人であることの証明
委任状代理人であることを証明

 

窓口での請求

市区町村役場の窓口に赴き請求します。窓口で教えてもらえるので、一番確実です。

備え付けられてある「戸籍に関する証明書交付請求書」や「住民票交付申請書」に本籍地や住所地等を記載して請求します。

代理人が取得する際には、委任状を事前に作成しておかなければなりません。

ほとんどの市区町村で雛形をホームページからダウンロードできます。  

 

郵送での請求

本籍地や住所地の市区町村役場ホームページから、「戸籍に関する証明書交付請求書」や「住民票交付申請書」をダウンロードして、記載の上郵送で請求する方法です。

窓口での請求も郵送の請求も必要書類は同じですが、郵送の場合はそのコピーも送らなければなりません。

切手を貼った返信用封筒も必要です。

窓口で取得する際には、現金で手数料を支払いますが、郵送の場合は小為替を同封します。

定額小為替とは?

あまり馴染みがありませんが、定額小為替は、郵便局の窓口で購入できる金券です。 切手のように金額が分かれていて、750円、450円といくつか種類があります。 手数料は1つにつき100円かかります。 余ると返してもらえるので、多めに入れておくと手間が少なく済みます。

 

本籍地を移転している場合

亡くなった方が、出生から死亡まで同じ市区町村から出ないで、本籍地を同一行政区に残している場合は、それ程難しくありません。

その市区町村役場に行くことができれば、窓口で出生から死亡までの戸籍を全て下さいと伝えれば、親切に教えてもらえます。

しかし、結婚や転籍等で本籍地を転々としておられると、結構大変になります。

この作業が相続登記の山場で、一番時間のかかる作業になることもあります。

戸籍等は、本籍地と名前を元に請求していきます。想定される流れは下記のとおりです。

令和2年 死亡本籍地 沖縄県那覇市那覇市役所へ請求
平成15年 離婚本籍地 沖縄県那覇市那覇市役所へ請求
平成3年 転籍本籍地 愛知県名古屋市中区名古屋市中区役所へ請求
昭和50年 結婚本籍地 青森県八戸市八戸市役所へ請求
昭和30年 両親が離婚本籍地 埼玉県浦和市さいたま市役所へ請求
昭和20年 出生本籍地 東京都新宿区新宿区役所へ請求

ちょっと、大げさですが、こんな風に全国の市区町村役場に戸籍を残している方は、珍しくありません。この場合必要となる戸籍等は

  • 出生時の改正原戸籍(新宿区)
  • 両親離婚後に籍の入っていた除籍(さいたま市)
  • 結婚後の除籍(八戸市)
  • 転籍後の改正原戸籍(名古屋市中区)
  • 離婚後沖縄へ移すまでの除籍(名古屋市中区)
  • 離婚で戸籍を移していれば、婚姻中の除籍(那覇市)
  • 死亡時の除籍(那覇市)

と、全国の戸籍や除籍が必要になって来ます。 ここまで取得して、初めて相続人が確定し、相続登記に必要な書類の作成に入ることができるようになります。  

 

亡くなった方の住民票が必要な理由

登記簿には、亡くなった方の情報として住所と氏名しか記載されません。

法務局が亡くなった方と登記簿上の所有者が同一人物であることを判断するには、住所と氏名を一致させるしかないのです。

登記されている住所氏名と住民票や戸籍の除附票に記載されている住所氏名が異なっていると、氏名と生年月日が同一でも同じ人物とは判断してもらえません。

その為に亡くなった方の住民票が必要になるのです。

しかし、住民票除票や戸籍の除附票の保存期間は、5年であることが多く、結構短いので取れなくなることもあります。

もし、住所氏名の同一性を示す書類が取得できない場合には、下記の書類で代替する方法が実務の通例です。

  • 市区町村役場発行の廃棄証明書
  • 市区町村役場発行の不在籍・不在住証明書
  • 権利書や納税証明書といった所有者が持っている可能性が高い書類

※法務局によって取り扱いが異なる場合がありますので、お問い合わせ下さい。  

 

不動産の固定資産税評価証明書の取得

相続登記には、上記の他に名義を変更する不動産の固定資産額評価証明書が必要になります。

この評価額を元に相続登記の際に納付する登録免許税を算出致します。

この評価証明書は、亡くなった年度のものではなく、登記申請をする時点のものを添付して下さい。

不動産の価格は4月1日をもって切り替わります。

お住まいの地域によって、評価証明書の取得場所や金額も異なるので、不動産所在地を扱っている窓口をホームページであらかじめ調べてから取得して下さい。

評価証明書も郵送請求が可能です。  

 

まとめ

かなり駆け足ですが、相続登記で一番重要となる相続人を確定させるための戸籍等の取得方法についてご説明しました。

戸籍は古いものになると手書きのため、字が読めないものも珍しくありません。

また、保管期間を満了していたり、戦災で燃えてしまっているものは、その証明書の発行をしてもらわなくてはなりません。

1ヶ所の市区町村役場で全て取得できる場合と全国転々としている場合では、苦労の度合いが天と地との差があります。

役所の方に聞いても分からなくなったときは、早めに専門家への依頼へ切り替えるのも正解のひとつです。  

 

 

 

 

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