起業の雑学

法人起業は株式会社でいいの?4つの会社3つの法人の特色を解説

2020年5月26日

法人で起業をする場合に「株式会社」や「NPO法人」等、様々あります。

どの法人形態を選んだら、自分の事業に最適なのかを判断できるように、代表的な法人形態の特徴をご説明します。

 

代表的な法人の特徴

法人化して起業をする場合、どんな法人を選んだらよいのか迷うと思います。

法人も大きく分けると「営利法人」「非営利法人」の2つに分かれますが、それぞれ特徴があります。

営利を目的とする法人は、「株式会社」や「合同会社」のことをいい、非営利目的な法人とは、「NPO法人」や「一般社団(財団)法人」、「公益社団(財団)法人」「社会福祉法人」などが代表的です。

営利法人と非営利法人の違い

2つの簡単な違いとしては、利益の分配ができるかできないかに尽きますが、給料や報酬はどちらも受け取ることができます。

配当金が出せるか出せないか。精算時に残余財産を戻せるかもどせないか

と言った方がイメージしやすいかも知れません。

また、「営利法人」「非営利法人」を問わず、各法人形態で「できること」「できないこと」「しなくてはいけない手続き」が個々に異なります。

設立時や運用していく上で必要な要件やかかるコストにも差があるので、慎重に選択しなければなりません。

社会的使命を尊重し、地域社会に対して「社会的利益」を追求する崇高な理念がある方でしたら、「非営利法人」を設立して、地域を牽引していただきたいと思います。

しかし、事務処理が厳正であったり、情報開示の必要性や所轄庁の監督を受けることもあるので、信頼や税制面のメリットだけでは、選択のハードルが高いと言えます。

その為、ここでは簡単に各法人の違いを説明した後に、一般的に選択する会社の設立登記の流れをお伝えします。

 

営利法人

事業により得た利益を特定の構成員である株主や社員(出資者の意味で、一般的な従業員とは異なります)に分配することを目的としています。

一般的に「会社」のことを指しますが、現行法で設立できる会社は「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」の4つです。

「有限会社」は今でも存続していますが、新しく設立することはできません。

有限会社という名前ですが、平成18年の法改正により、中身は株式会社と同じ構成に変更されています。

 

株式会社

株式会社は株式を発行し、資金を調達して事業を起こします。

スタート時には、社長だけ出資することが多いのですが、第三者からも資金を調達しやすい点が株式会社のメリットです

事業が大いに軌道に乗った場合には、上場して株式を一般公開すれば更に第三者からの資金調達が可能となります。

古くから存在している会社の形態である点と誰もが知っている最もポピュラーな法人です。

他の法人組織に比べて信用が得やすく、求人面でも良い人材が集まりやすいという利点があります。

 

合同会社

平成18年に新会社法が施行されてから設立できるようになった会社形態です。

関係する当事者間で、最適な利害状況を自由に設定することが可能な点と、その効果として事業が円滑に実施できる点に注目を集めました。

後述する合名会社、合資会社の中間にあたる存在です。

合同会社は株式会社に比べて設立費用が安いことにメリットがあります。

株式会社の設立費用と比較すると実費が14万円程安くなります

 

合名会社

合名会社は会社法上は資本金の制度がなく、社員(役員)が債権者に対して制限なく責任を負う、無限責任社員だけで構成される会社形態のことを指します。

(税務上は、出資金額の記録が残されています)

平成18年の新会社法施行までは2名以上の役員が必要でしたが、今は1名以上でも合名会社を設立することができます

株式会社や合同会社よりも設立費用を押さえることができるので、資金繰りが苦しい起業時には大きなメリットになります。

また、従来は認められていなかった株式会社へ組織変更も可能になっていますので、将来的には株式会社への移行も可能です。

 

合資会社

無限責任社員のみの合名会社に加えて、有限責任社員の両方で形成されるのが合資会社です。

有限責任社員は会社へ出資した金額の範囲内で責任を負いますが、株式会社の株主と同様でそれ以上の責任は免れます。

ただ、株主と異なり、出資した者は必ず役員になりますので、役員としての責任は別の話になります。

合資会社も設立費用にお金がかからないので、責任を負わせたくない人と事業を起こす場合には向いているかもしれません。

合資会社も株式会社への移行は可能です。

 

非営利法人

営利法人と異なり利益の分配をしない組織を非営利法人といいます。

収益を上げてはいけないという意味ではなく、法人に蓄積しても配当を出せません。

非営利法人はたくさんありますが、「NPO法人」「一般社団法人」「公益社団法人」「社会福祉法人」などがあります。

非営利法人は、業種範囲が狭く一般的な起業には向きません。

もし選ぶとするならば、「一般社団法人」「一般財団法人」は、役所の認可も不要なので、公共的なイメージを持つ名前を活かせるならば、選択してもよいかと思われます

 

NPO法人

公共的活動を主に行っているイメージで、認知度は高いです。

ボランティア活動や慈善事業といった内容で、「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもの」20種類の活動が規定されています

会社組織より金儲けでなくクリーンなイメージを持たれやすいかもしれません。

ただ、その分利益をため込まないと思われるからか、信用力では他の法人の方が高そうです。

NPO法人(特定非営利活動法人)の事業内容は下記のとおり定められています。

NPO法人の事業内容

  1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
  2. 社会教育の推進を図る活動
  3. まちづくりの推進を図る活動
  4. 観光の振興を図る活動
  5. 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
  6. 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  7. 環境の保全を図る活動
  8. 災害救援活動
  9. 地域安全活動
  10. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  11. 国際協力の活動
  12. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  13. 子どもの健全育成を図る活動
  14. 情報化社会の発展を図る活動
  15. 科学技術の振興を図る活動
  16. 経済活動の活性化を図る活動
  17. 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
  18. 消費者の保護を図る活動
  19. 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
  20. 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

細かく規定されてはおりますが、上記以外の活動を禁じられている訳ではありません。

収益事業を行い、利益を得ることも可能ですが、得た利益を分配することはできずに、特定非営利活動の資金にしなければなりません。

 

一般社団法人

従来民法上で規定されていた「社団法人」「財団法人」が、平成20年に一般と公益に区分けされました。

この時期に従来の「社団法人」「財団法人」は、一般か公益かを迫られた経緯があります。

公益社団法人も公益財団法人も、ほぼ公益の為に活動する事業制限を設けられていますので、起業に向かない為、ここでは割愛致します。

法人の活動事業も公益比率などが決まっているので、自由な活動を行いにくいです。

社団とは、一定の目的で「社員」により構成される団体(人の集まり)で、そのうち社団法人とは、法律により法人格が認められ権利義務の主体となるものです。

財団法人は財産の集まりと言ったイメージです。

この場合の「社員」は、世間一般で従業員と同じ意味で使われる社員とは異なり、社団法人の構成員のことで、総会(社員総会)において議決権を持つ人のことです。

通常、一般社団法人の運営資金は、会費収入などによって賄われます。

事業目的として、必ずしも公益性が必要とされるわけではなく、NPO法人と同様に収益事業を行うことも可能です

ただ、いくら利益が出たとしても、上記の社員へ利益を分配(配当)することができない点もNPO法人と同様です。

「一般社団法人」という名称を付けていても、その中身によって「非営利型法人」「営利型法人」に分けられます。

かなり制限を受けますが、要件を満たせば、非営利法人と同様の税制面や助成等の優遇を受けることが可能です

 

社会福祉法人

事業が特化しており、「社会福祉事業」を行うことを目的としているものです。

極めて公共性の高い法人であるため、法人の設立や運営を求められる上に監督を受けなくてはいけない等、かなり厳しい規制があります

社会福祉法人会計基準に則した会計処理を行うことが求められているので、かなり煩雑な会計処理が必要です。

理事には「社会福祉事業についての学識経験者」または「地域の福祉関係者」が含まれていることが必要とされており、監事の内1名は、財務諸表を監査しうる者として「税理士」「公認会計士」などであることが求められています。

その他、運転資金等も一定以上の金額の維持を求められているため、高い信頼性を得ることができます。

厳しい運用を求められる反面、公的な支援や助成が行われ、安定的に事業が継続するような制度になっています。

あまりにハードルが高すぎて個人単位の起業には向きません。

まとめ

 代表的な法人の違いや特色を表にしてみました。

 株式会社合同会社合名会社
合資会社
NPO法人一般社団法人社会福祉法人
事業目的自由自由自由主として20種類の特定非営利活動自由社会福祉事業
設立手続き登記のみ登記のみ登記のみ登記と、所轄庁の認証登記のみ所轄庁の認可後、2週間以内に登記
所轄庁の監督なしなしなしありなしあり
資本金1円以上1円以上1円以上0円0円0円
定款認証手数料等
(紙で作成した場合別途収入印紙代40,000円必要)
約5万2千円0円0円0円約5万2千円0円
登録免許税最低15万円
(資本金額×7/1,000)
最低6万
(資本金額×7/1,000)
最低6万円0円60,000円0円
設立必要人数1人以上1人以上合名会社は1人以上合資会社は2人以上10人以上2人以上理事6名以上
監事2名以上
理事2倍超の評議員
役員の任期2年~10年任期なし任期なし原則2年理事:2年以内
監事:4年以内
2年以内
決算の公開公告義務あり公告義務なし公告義務なし決算書類等を所轄庁に提出公告義務あり財務諸表を含む現況報告書を所轄庁に提出
信用力取引相手として高め取引相手としてやや低め取引相手としてやや低め取引相手としてやや劣る取引相手として低くはない取引相手として高め
代表取締役を名乗れるか名乗れる名乗れない名乗れない名乗れない名乗れない名乗れない
特徴所有と経営の分離所有と経営が一致所有と経営が一致利益を配当することはできない利益を配当することはできない
目的を会社と同様に設定できるが、公的イメージを持たれやすい
利益を配当することはできない
公的支援や助成も大きいが、厳しい要件や監督がある

 

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