相続・遺言・登記

場所や用途によって異なる、農地転用の許可や届出が必要な場合の解説

2020年11月19日

日本は、国土が広くないため、食料の安定供給のために、農地法によって、農地の取引が規制されています。

そのため、無断で農地に建物を建てたり、駐車場や資材置場にすることはできません。

建物建築等の為に、農地の転用をしようとする場合には、必ずその行為を行う前に知事の許可を受けるか、農業委員会への届出をしなければなりません。

転用する農地の所在地が、市街化調整区域内か市街化区域内かで、大きく手続きが異なります。

 

建物建築の規制

 都市計画区域内で「市街化区域」「市街化調整区域」を区分することを「線引き」と言います。

この線引き日は、市町村で異なります。

例えば、愛知県の市町村は、大半が昭和45年11月24日が線引き決定年月日となっております。

線引き後、市街化区域は用途で規制されました。

市街化調整区域は、原則建物の建築はできないものとして規制されました。

建築する為に一部の例外以外は、許可を得なければ、建物が建てられないよう規制されることになったのです。

市街化調整区域は、市街化を抑制する区域で、市街化区域は、市街化を促進する区域であり、対局に位置するものです。

いずれも都市計画区域であり、都市計画区域には市街化区域と市街化調整区域の他に「非線引き区域」の三つがあります。

都心部にはありませんが、非線引き区域は、建物の建築に開発許可や建築許可を得る必要がありません。

但し、農地転用には、同じく許可が必要です。

市街化調整区域とは?

「市街化調整区域」とは、市街化を抑制する地域のことです。

住宅や施設の建設などの目的とはしていないため、原則として、人が住むために必要な一般的な住宅や商業施設などを建築することが認められていません。

市街化区域とは?

「市街化区域」とは、住宅や商業施設が密集するエリアで、市街化を率先して行っている地域です。

住宅なども許可なく建築することができます。

 

農地とは

 農地法でいう「農地」とは耕作の目的に供される土地のことです。

それは実際に耕作されている土地はもちろん、耕作されていなくても、耕運機やトラクターが入ればすぐに耕作が可能となる土地を含みます。

農地法は、登記簿上の地目に関係なく、現状の利用方法により適用されます。

農地法は現況主義を採用しているのです。

登記簿上の地目が宅地や雑種地になっていても、実際には農地となっていた場合には農地法の許可や届出が必要になります。

また、登記簿上の地目が農地となっていても、現状が宅地となっていた場合には、本来農地法の規制対象になりませんが、登記簿上の地目を変更するだけでも、許可や届出が必要になる場合もあります。

 

農地転用とは

 農地の「転用」とは、「農地を農地以外のものにすること」です。

農地の所有者自らが転用を行う場合は、「農地法第4条」の手続き、農地の権利移転や賃借権等の設定を伴う場合は、「農地法第5条」の手続きが必要です。

市街化区域では「届出」。市街化調整区域では「許可」という手続きに分かれます。

農地を農地のまま、名義を変更したり、使用者を変更しようとする場合は、市街化区域であっても、市街化調整区域であっても、「農地法第3条」の規定による農業委員会の「許可」が必要です。

また、同じ農地法3条ですが、平成21年の改正から、農地を相続等により取得した場合にも、農地法第3条の「届出」が必要となっています。

  • 農地を売買、賃貸借等をする場合
    ⇒農地法第3条許可
  • 自分が所有している農地を農地以外にする場合
    ⇒農地法第4条許可
  • 農地を農地以外にする目的で、売買、賃貸借等をする場合
    ⇒農地法第5条許可

農業委員会とは?

「農業委員会等に関する法律」に基づき、市町村に置かれる行政委員会で、農民の代表機関として市町村から独立し、農地法に基づく許可等の行政事務を行う所です。

 

市街化区域の場合

 市街化区域で農地を住宅や道路、資材置場、駐車場等農地以外の用途にしようとする場合には、「農業委員会」へ農地転用の「届出」が必要です。

各行政機関で扱いが異なるかもしれませんが、届出を提出してから、おおよそ1週間から2週間くらいで、受理通知書を発行してもらえます。

受理通知書を発行してもらえると、工事に着工することができるようになります。

届出は、言葉のとおり届け出るので、無断転用をしていた等の事情でもなければ、まず間違いなく受理通知書を発行してもらえます。

市町村によりますが、随時受け付けてもらえる所がほとんどで、審査も厳しくありません。

 

市街化調整区域の場合

市街化調整区域で農地転用をする場合には、市街化区域と異なり、「都道府県知事」より農地転用の「許可」を得る必要があります。

また、市街化調整区域の農地に建物や店舗を建てるためには、同時に都市計画法上の「開発許可(建築許可)」を申請する必要があります。

市街化調整区域の農地法上の許可とは何か、個別にご説明します。

 

農地法3条の許可

農地の耕作を目的に農地を売買したり、貸し借りする場合には、農地法3条の許可が必要となります。

これは各市町村の「農業委員会」が許可を行い、市街化区域、市街化調整区域の別なく、許可が必要を得なければなりません。

3条の許可基準は、農業保護の観点から、各市町村の事情で異なっている場合がほとんどです。

地域の農業事情に見合った下限面積を設けたり、実際に耕作をする人が、本当に耕作をできるかどうか等の可能性を審査するなど、一定の基準に適合した場合に許可しています。

個人が農地を貸借する場合は、この農地法に基づく3条許可を受ける方法と、農業経営基盤強化促進法に基づき、市町村が定める農用地利用集積計画により利用権を設定する方法があります。

 

農地法4条・5条の許可

市街化調整区域の農地に住宅を建てたり、資材置場として利用する場合、農地法4条、あるいは5条許可を申請します。

上述の様に、所有者や利用者が変わらない場合が4条。変わる場合が5条です。

市街化調整区域の農地の転用の許可は、上述の市街化区域の届出とことなり、許可権者は都道府県であり、かなり細かく審査されます。

書類も多くなり、審査に時間もかかります。

市町村の農業委員会によって異なるものの、許可の受付は月1回で、受付締切日も決まっています。

大きな市でない限り、市町村の農業委員会を経由し、都道府県で審査され、許可も県が下ろします。

許可が下りるまでの期間も受付締切日から約1ヶ月半から2ヶ月の期間ほどかかります。

 

農地転用できない区域

農業生産力を保ち安定した食糧供給をするために、厳しい条件の上、例外的に許可される場合もありますが、原則として農地転用が許可されていない区域があります。

 

農用地区域内農地

特に高い生産力がある農地で、農業振興地域に指定された区域は、農業以外の用途への転用を厳しく法律で制限されています。

地図に青色が付けてあることから、「青地」と呼んだりもします。

それに対して、農業振興地域以外の農地を、青地に対して「白地」と呼びます。

 

甲種農地

市街化調整区域内の農地の中でも、特に良好な営農条件を備えているとされた区域です。

 

第1種農地

約10ヘクタール以上に広がる集団的な農地で、農業公共対象農地であり、生産力の高い農地です。

ただし、甲種農地と第1種農地では、農業関連施設の建築は、許可されることがあります。

 

罰則

農地法では以下の違反をした場合に、厳しい罰則が設けられています。

  • 規定に違反して転用した者
  • 許可された条件に違反した者
  • 違反の転用について工事を請け負った者
  • 偽りその他、不正の手段で許可を受けたもの
  • 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
  • 法人は1億円以下の罰金

もし、無断で農地を転用した場合は、「原状回復」といって、元の状態に戻さなければいけません。

よって、許可を取らずに住宅を立てた場合は、建物自体を取り壊さなければなりません。

 

まとめ

農地に建物を建てたり、資材置場や駐車場として利用する場合に、届出や許可が必要でした。

その規制は、場所によって大きく異なります。

市街化調整区域の土地価格が安いのは、そういった理由が大きく影響しています。

農地法の許可は、かなり重要です。

土地の売買契約をしても、許可が下りなければ、契約は無効になります。そもそも効力を発効しません。

農地等は日本の食料供給において重要な基盤です。

後から元に戻せとか、取り壊せと言われないためにも、農地法を守らなければなりません。

具体的に農地に建物を建てる方法には、厳密な要件が定められています。

農地の開発や農地への建物建築についての詳細は、こちらをご覧ください。

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