相続・遺言

【家族信託の事例】あるケースから作成した信託契約書と登記記載事項

もともと信託法は、大正11に制定されましたが、時代も変わり、現代の様々な類型に対応できなくなって来ました。

そのため、新信託法が平成18年に全面改正され、徐々に世間へ浸透されつつあります。

改正された信託法に基づく家族信託ですが、以前と比べるとかなり使いやすくなっています。  

信託の類型

新しい信託法は、現代の様々なニーズに応えるため、「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」、「自己信託」、「目的信託」といった、新しい利用方法が設けられました。

後継ぎ遺贈型受益者連続信託とは?

 

後継ぎ遺贈型の受益者連続信託は、財産を、複数世代にわたって承継することができる信託です。

自分のある財産を、自分が亡くなったら配偶者に承継し、配偶者が亡くなったら、次には子どもに承継するということを生前に決めることができます。

自己信託とは?

自己信託とは、委託者が自ら受託者となり、受益者のために自分の財産を管理処分等する信託です。

自己信託は、自分で自己に託す信託の為「信託宣言」ともいわれます。

目的信託とは?

目的信託とは、受益者の定めのない信託です。

特定の目的を達成することを目的とした信託のことをいいます。

 

家族信託の構成要素

家族信託の構成している要素は、大きく6つの要素があります。

家族信託の要素

  • 信託目的
  • 信託行為
  • 信託財産
  • 委託者
  • 受託者
  • 受益者
この6つの要素を、それぞれの事例に応じて、使いやすく当てはめて行くことになります。

それらをまとめたものが、「信託契約書」になり、管理運用の為に、銀行口座の開設や登記、税務へと繋がります。  

 

受託者は報酬を得ることができない

信託業法上、報酬を得る信託業は、内閣総理大臣の免許または登録を受けた者でなければ営むことができません。

そのため、弁護士等の専門家でも受託できないとされています。

信託会社にお願いすれば、早いのですが、一般的に信託報酬が高額になりがちです。

家族信託を利用する場合、信頼できる受託者を見付けることができないと、利用することが難しいと言えます。

基本的に受託者は、無報酬で受託しなければならないので、結果として親族が受託することになります。

よって、信託財産の管理ができる身内がいないと、事実上家族信託を使えなくなってしまうのです。

ただ、専門知識を要する場面には、専門家からサポートを受ければ、もしもの場合を乗り切ることは難しくありません。  

 

家族信託のとある事例

家族信託を利用する目的は、多岐にわたります。

様々な利用方法がありますが、その中でも、とある事例から作成した契約書の例を御紹介します。

自分の判断能力が乏しくなった場合に備えて、預貯金と自宅を子どもに信託するケースです。

もし、自分が施設に入らなければならなくなった場合に、子どもに自宅を売却してもらって、入所費用や生活費に充てることができます。

委託者・受益者:母親

受託者    :長男

長男が先に亡くなった場合等には、次男が受託者を引き継ぎます。

先述の家族信託の構成要素を、以下のとおり当てはめます。

信託に関する事項

委託者に関する事項
〇〇〇〇(母親)  

受託者に関する事項
△△△△(長男)  

受益者に関する事項
〇〇〇〇(母親)  

信託の目的
本信託の目的は、本契約の定めに従い、受託者が信託財産を受益者のために管理、運用及び処分することとする。  

信託の管理方法
受託者は、本件信託契約に別途定める場合を除き、本件信託契約の規定及び受益者の指図に従い、信託不動産及びその他の信託財産の管理・運用・処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を行う権限を有する。 

信託の終了事由
本件信託は、委託者兼受益者〇〇〇〇が死亡した時に終了する。  

その他の信託の条項
1.受益者は、受益権を譲渡又は質入れすることができない。
2.受託者は、本信託においては、信託目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるときに限り、受託者の書面による意思表示により、信託を変更することができる。
3.受益者の法定相続人を本信託の帰属権利者として指定する。

 

家族信託契約書

信託契約書例

信 託 契 約 書

委託者 兼 受益者〇〇〇〇(母親)と、受託者△△△△(長男)は、次のとおり信託契約を締結した。

第 1 条(信託目的)

本信託の信託目的は、以下のとおりである。

委託者の主な財産を受託者が管理又は処分等することにより

(1)委託者の財産管理の負担を低減すること。

(2)委託者が詐欺等の被害に遭うことを予防し、委託者が安全かつ安心な生活を送れるようにすること。

(3)委託者が、従前と変わらぬ生活を続けることにより、快適な生活を送れるようにすること。

第 2 条(信託契約)

委託者は、本契約の締結の日(以下「信託開始日」という。)に、前条の目的に基づき、別紙信託財産目録記載の財産(以下「信託財産」という。)を受託者に信託し、受託者はこれを引き受けた。(以下本契約に基づく信託を「本信託」という。)

第 3 条(信託金銭)

委託者は、本契約締結後、遅滞なく、金〇〇〇〇万円を受託者に引き渡す。(以下「信託金銭」という。)

2 受託者は、前項の金銭を第12条の区分に応じ分別管理する。

第 4 条(信託不動産)

1 委託者及び受託者は、本契約締結後直ちに、信託財産目録1記載の不動産について引渡しをし、本信託を原因とする所有権移転及び信託の登記手続きを行う。

2 前項の登記費用は、受託者が信託金銭から支出する。

第 5 条(信託不動産の瑕疵に係る責任)

受託者は、信託期間中及び信託終了後、信託不動産の瑕疵及び瑕疵により生じた損害について責任を負わない。

第 6 条(信託の追加)

委託者は、受託者の同意を得て、金銭を本信託に追加することができる。

第 7 条(委託者)

本信託の委託者は、〇〇〇〇(母親)(住所:---------、生年月日:昭和 年 月 日)である。

第 8 条(受託者)

本信託の受託者は、以下のとおりとする。

当初受託者

住所    ---------

氏名    △△△△(長男)

生年月日  昭和 年 月 日

2 当初受託者が信託法第56条第1項各号に掲げる事由に該当する場合、以下の者を後継受託者に指名する。

後継受託者 

住所    ---------

氏名    □□□□(次男)

生年月日  昭和 年 月 日

第 9 条(受託者の信託事務)

受託者は、以下の信託事務を行う。

(1)信託財産目録1記載の信託不動産を管理、処分すること。

(2)信託財産目録1記載の信託不動産を第三者に賃貸し、第三者から賃料を受領すること。

(3)前号によって受領した賃料を、上記1号の信託不動産を管理するために支出すること。

(4)上記1号及び2号において受領した売却代金及び賃料を管理し、受益者の生活費、医療費及び介護費用等に充てるため支出すること。

(5)信託金銭を管理し、受益者の生活費、医療費及び介護費用等に充てるために支出すること。

(6)その他信託目的を達成するために必要な事務を行うこと。

第10条(信託事務処理の第三者への委託)

受託者は、信託財産目録1記載の不動産の管理を第三者に委託することができる。

第11条(善管注意義務)

受託者は、信託財産の管理、処分その他の信託事務について善良な管理者の注意をもって処理しなければならない。

第12条(分離管理義務)

受託者は、信託金銭と受託者の固有財産とを、以下の方法により、分別して管理しなければならない。

(1)金銭  信託財産に属する財産と受託者の固有財産とを外形上区別することができる状態で保管する方法

(2)預金  信託財産に属する預金専用口座を開設し当該口座で管理する方法

第13条(帳簿等の作成・報告・保存義務)

1 本信託の計算期間は、毎年1月1日から12月31日までとする。ただし、第1期の計算期間は、信託開始日から令和 年 月 日までとする。

2 受託者は、信託事務に関する計算を明らかにするため、信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況を記録しなければならない。

3 受託者は、第1項の信託期間に対応する信託財産目録及び収支計算書を当該計算期間が満了した月の翌月末日までに作成しなければならない。

4 受託者は、信託財産目録1記載の信託不動産を第三者に賃貸することに関し、賃借人の退去、新たな賃借人の入居及び賃料並びに管理費の変更など賃貸借契約の当事者及び内容等に変更があった場合には、その経過報告書を作成しなければならない。

5 受託者は、第3項記載の信託財産目録及び収支計算書を、第3項により決められた期日までに、受益者に提出しなければならない。

6 受託者は、第4項記載の経過報告書を、その作成の都度、受益者に提出しなければならない。

7 受託者は、第2項に基づき作成した帳簿は作成の日から10年間、第5項並びに前項に基づき受益者に提出した書類は信託の清算の結了の日までの間、保存しなければならない。

第14条(信託費用の償還)

受託者は、信託金銭から信託事務処理に係る費用の償還を受けることができる。

第15条(信託報酬)

受託者は無報酬とする

第16条(受益者)

本信託の受益者は、委託者〇〇〇〇(母親)である。

第17条(受益権)

受益者は、受益権として以下の内容の権利を有する。

(1)信託財産目録1記載の信託不動産を第三者に賃貸したことによる賃料から給付を受ける権利

(2)信託財産目録1記載の信託不動産が処分された場合には、その代価から給付を受ける権利

(3)信託財産目録1記載の信託不動産を生活の本拠として使用する権利

(4)信託財産に属する金銭から給付を受ける権利

第18条(受益権の譲渡・質入れの禁止)

受益者は、受益権を譲渡、質入れ又は担保設定その他の処分をすることはできない。

第19条(信託の変更)

本信託においては、信託目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるときに限り、受託者の書面による意思表示により、信託を変更することができる。

第20条(信託の終了事由)

本信託は、受益者の死亡及び信託法第163条に該当する場合に終了する。

第21条(帰属権利者)

本信託が終了した場合、残余財産は受益者の法定相続人に帰属させる。 ただし、受益者の死亡以外の事由で本信託が終了した場合は、終了時の受益者に帰属させる。

以上の契約を証するために本証書を2通作成し、当事者が自署押印のうえ各1通を保有する。

令和 年 月 日

委託者

住  所 ---------

氏  名 〇〇〇〇(母親)

受託者

住  所 ---------

氏  名 △△△△(長男)

 

名義の変更

この信託契約書で託す財産は、金銭と不動産です。

金銭は、分別して管理しなくてはならないので、別途預金口座を開設します。 不動産は、信託を原因として登記手続きをします。  

 

信託金銭管理用口座

信託金銭の管理には、受託者名義の口座で管理する方法と受託者として信託口口座を開設する方法があります。

受託者名義の口座の方が、作りやすくて、使いやすいのですが、信託法の機能を活かした信託口口座の方が、間違いありません。

その機能として、

・受託者個人への債権者は信託財産に対して差押えはできない。

・委託者、受益者の死亡により口座は凍結しない。

という点が優れています。

しかし、対応していない銀行も多いので、あらかじめ利用したい銀行へ問い合わせて下さい。

また、信託契約自体は、公正証書である必要はありませんが、信託口口座を開設するには、公正証書でないと受け付けない金融機関が、ほとんどです。  

 

所有権移転及び信託の登記

不動産に関しては、通常の名義変更だけでなく、同時に信託であることが分かる登記もしなくてはいけません。

以下の登記簿は、信託を原因として所有権移転登記をしたものです。

  信託に関する登記手続きは難解なので、司法書士に依頼することをお薦め致します。  

 

まとめ

家族信託でできることの例を、信託契約書と合わせて御紹介致しました。

かなりフレキシブルに活用することができます。

そんな自由度が高い家族信託ですが、任意後見契約や遺言といった、他の制度と組み合わせると、より活用することができます。

それぞれの制度の長所短所を把握して、補い合うと、将来の対策として漏れがなくなります。

しかし、相談先も様々です。 弁護士、税理士、司法書士、公証役場、銀行、等々。

専門性が高いので、相談に行ってもその先が扱っていない場合もあります。

まずは、相談できる適切な方を探しておくのも大切です。

また、相談先や依頼先が近いというのも1つのメリットです。

足がかりとして、近くの専門家を訪ねてみるところから、スタートするとよいかもしれません。

その点も含めてが、将来の対策ですね。  

 

解決への道筋が詰まっている本を、最後に御紹介致します。

認知症の家族を守れるのはどっちだ! ?成年後見より家族信託

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もし、自分で作成してみようと思われたら、文例を利用した方が早道です。

 

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