起業の雑学

消費者被害が加害者側に!儲かるマルチ商法?ねずみ講との違いとは

2020年6月26日

今回は、事業者として知っておきたい消費者トラブルとして「マルチ商法」についてご説明致します。

 

マルチ商法(連鎖販売取引)とは

マルチ商法とは、「特定商取引法」で規制されている「連鎖販売取引」といった販売形態です。

「ネットワークビジネス」「コミュニケーションビジネス」などとも呼ばれます。

販売組織の加入者が、別の消費者を組織に加入させて販売した商品のマージン(紹介料)を受け取ります。

その商品を購入した消費者が、さらに別の消費者に商品を売って、組織に加入させてマージンを受け取っていく、という行為が連鎖していって、組織をピラミッド式に拡大していく商法です。

以前のように、口コミだけではなく、パソコンやスマホでの交流サイト(SNS)やメールの広告で勧誘する手法が、広がっています。

商品を販売して得られる利益より、友人や知人、親類を組織に加入させて会員を増やすことによって得られる「紹介料」「キャッシュバック」などが主な収入となりがちです。

 

マルチ商法とねずみ講の違い

 「マルチ商法」は、法律で禁止されている「ねずみ講」と違い、実際に商品を流通させているので、適切な組織運営を行えば事業を維持することが可能です。

ネズミ講とは?

ねずみ講(無限連鎖講)とは、実際には販売流通する商品がなく、組織の下部構成員から会員費を吸い上げることで、組織を運営しているという点です。

ねずみの子供がどんどん増えていく様子から、こういった名前になっています。

当然、人口には限りがるので、入会できる人数には必ず限界がきます。ネズミ講は事業の維持ができない、最初から破綻が確定しているシステムのことをいいます。

社会問題にもなったため、1978年に「無限連鎖禁止法」が成立し、禁止されています。

時代劇なんかでも、「頼母子講」という名前で登場するくらい、昔からある商法です。鎌倉時代からあるようですね。

 ネズミ講マルチ商法
商品取り扱っていない取り扱っている
稼ぎ方会員費などの金配当商品の販売利益
勧誘によるキャッシュバック
適法性違法合法
規制無限連鎖禁止法特定商取引法

マルチ商法の末路

たいてい勧誘の時に、既にその事業を行っている人の成功例を紹介されますが、実際はそんなに簡単に利益を得られるものではありません。

最終的に紹介料が積み上がって、吸い上げる組織上部の人間だけが儲かるしくみです。

 

狙われる対象と事例

まだ社会人経験のない学生や、ビジネス経験の乏しい主婦らが構成員となり、売れない大量の在庫をに抱えることになってしまいます。

事例1 人を紹介するだけで儲かると勧誘された

疎遠にしていた学生時代の友人から、突然連絡があり「簡単に儲かるいい話がある」と誘わました。約束の場所に行ってみると、友人以外にも知らない人が同席していて、そこは販売組織の説明会でした。

そこでは「商品を売って友達を誘って組織に入会させれば、マージンが入るよ」といかにも簡単に儲かる仕組みを強調されて、しつこかったこともあり、つい契約してしまいました。

その後、友だちを誘ってみたが、入会してもらえず、商品の在庫が大量に残ってしまいました。

事例2 配当や紹介料が入ると勧誘された

学生時代の友人から、久しぶりに会わないかという電話があり、居酒屋で再会した。そこには友人以外にも知らない人が同席していてた。

「海外の不動産に投資をすれば仮想通貨で配当があるので、借金をしてもすぐに返済できる。こんなチャンスは今しかないし、投資者を紹介すれば紹介料を受け取ることができるので、すぐに元が取れる」

と説明を受けたので、信じ込み借金して、友人に代金を支払った。

しかし、内容に関する書面や代金の領収書は、発行してもらえなかった。勉強会にも参加してみたが、儲かる仕組みの説明が全くなかった。友人に解約の連絡をしたところ、返金できないと言われてしまった。

人間関係をお金に換えるといってもいい商法で、友人、知人や親類を無理に勧誘して、人間関係が悪くなる問題も多発しています。

 

マルチ商法に多い取扱商品

取扱商品は、健康食品・化粧品が圧倒的に多くなっていますが、アクセサリー、美容機器、布団、インターネット上の権利や会員権など実態がわからないものもあります。

最近では、「暗号資産(仮想通貨)」「海外事業等への投資」「アフィリエイト」などの儲け話も広まっています。

この場合、事業者の実態や儲け話の仕組みがよく分からないうえ、事業者に解約や返金を求めても交渉が難しいという事態に陥りやすいです。

単に「紹介料」「キャッシュバック」だけでは、新規に加入する人にとって、胡散臭さが拭えませんので、商品を介して商売の形を取り、汗を流して販売する労働の対価に見せかけて、少しでも胡散臭さを払拭させています。

 

マルチ商法への勧誘手法

しかし、実体は紹介料が中心ですので、仕組みを理解できる人なら、なかなか引っかかりません。

そこで、数人で囲んで勧誘して、いかにもビジネスチャンスがある様に誘ったり、豪華なパーティーに招かれたりします。

パーティーで豪華な料理が用意され、成績優秀者が壇上で華々しく表彰される様子を見ると、チャンスを逃したくない気持ちや会場の連帯感も相まって、入会してしまうケースが多々あります。

そういった手法を「催眠商法(SF商法)」といいますが、マルチ商法の勧誘手法に上手く組み込まれている場合もあります。

 

よくある誘い文句

勧誘の方法として、よく以下のセールストークで誘われますので、ご注意下さい。

  • 人を紹介するだけで収入になる。
  • たくさんの方が成功しています。
  • 月収100万円も夢じゃない。
  • 早くしないとチャンスを逃します。
  • 新しいビジネスだから早い者勝だよ。
  • 簡単に元が取れます。
  • 勝ち組になれます。

 

対処方法

    • 契約書面を受け取ってから20日以内なら、「クーリング・オフ」により無条件で解約できます。
    • 告知方法によっては、意思表示を取り消すことができる場合があります。
    • クーリング・オフ期間が過ぎても、消費者契約法による取消しを業者に主張することができる場合があります。

 

消費者側の被害者だと思っていたら、事業者側の加害者側だった

注意が必要なのは、この取引は、加入した人が他の人に商品を再販売をするつもりで、販売組織に加入することが多いので、消費者でなく事業者になってしまうことがあります。

そうなると以前御紹介した、消費者を守り事業者を規制する「特定商取引法」や「消費者契約法」の適用がなくなり、保護されなくなります。

最終的には個別具体例で違うので、司法の場において判断されることになりますが、注意が必要です。

 

まとめ

今回は消費者の目線で御紹介しましたが、折角事業を始めるなら、利益ばかりを追求しないで、愛される事業者になりたいですね。

永続している起業は、少なからずお客様の目線でものごとを考えています。

起業する際は、加害者にならないようお気を付け下さい。

 

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