起業の雑学

名板貸しは危険!会社名を貸すと思いもよらない責任が発生します

会社の名前のことを法律上は「商号」といいます。

原則、自分の会社名を自由に選定でき、営業内容と関係のない名前でも、付けることができます。

しかし、不正競争等、自分の商売を有利に運ぶような不正の目的で、他の商号をまねることは、使用を止められることもあります。

もし、自分の会社名を他人が使用することについて、認めていたり、使われていた場合にはどうなるのでしょうか? 具体的には、A会社が、B会社に、A会社と同じ商号の使用を認めます。

その後、B会社がA会社と同じ商号でCさんと契約しました。

Cさんは、同じよう名前の会社であるB会社をA会社と勘違いしていた場合に、名板貸しによる契約となってしまいます。  

 

同じ会社名を使う許可をした場合

会社法第9条には、

「自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社と取引しているものと誤信した第三者に対し、商号使用の許諾先である他人とともに連帯して、その取引によって生じた債務を弁済しなければならない」
と規定されています。

つまり、自分の会社と取引をしていると誤解を与えたのは、許可した人なので、責任を取りなさいということです。

本来、自分で約束しない限り、関係のない他人が勝手に締結した契約の影響を受けないのが、原則です。

しかし、いくら自由競争とはいえ、度が過ぎるものまで規制しないのでは、秩序が失われてしまいます。  

 

名板貸しとは名義を貸すこと

取引において真実と異なる紛らわしい名称(外観)があり、真の権利者にその外観作出についての帰責性がある場合、これを信じて取引した第三者を守る趣旨で、誤解を与えたものに責任を取らせる考え方が、認められています。

こういった法律の考え方を「外観法理」や「表見法理」と呼んでいます。

その責任は、以下の様な場合に発生します。

  1. 真実と異なる外観が存在すること
  2. 真の権利者に外観作出の帰責性があること
  3. その外観を信頼(第三者の善意・無過失)したこと

こういった、いわゆる名義貸しである「自己の商号の使用を他人に許諾すること」を商法で「名板貸し(ないたがし)」と規定されています。  

 

紛らわしい名前の場合

全く同じ名前を使っていいよっといった場合には、分かりやすいのですが、紛らわしい場合はどうなるのでしょうか。

長年勤務していた方が、独立するときに○○会社○○支店といった名前を付ける許可をした。

○○製材株式会社の社長が、○○木材株式会社の名前を使う許可をした。

といった、微妙な場合もあります。 この場合、支店や出張所のような言葉が付け足されていても、同一性を害しない範囲であれば、名板貸しの責任が生じるとされています。

違う名称だと本人達が考えていても、誤解を与えた原因になった理由で、責任を持たせられるのです。

 

勝手に名前を使われていた場合

許可していないのに、勝手に自分の会社の名前を使われていた場合。

特に使用を許諾していたわけではないのに、紛らわしい名前の会社がある認識があるだけでも責任が発生してしまいます。

商売をする上で、法律は取引をする第三者の保護も図っています。

法律全体に統一している考え方ですが、「黙示の承諾」という、文句を言わずに黙っていたら、認めたのと同じだよって考え方があります。

名板貸人が、商号の使用を認めていなくても、自分の会社名が使われていることを知っていて放置していたような場合には、それを信じた第三者の利益を保護する観点から、黙認は許諾したも同じだということになり、名板貸人に責任が発生してしまいます。

勝手に名前を使われた上に、被害まで被っては、たまったものではありませんが、取引の安全も図られているので、常に注意が必要です。  

 

責任を負う基準

どんな場合でも、漏れなく責任を負うのでは、利益バランスとしてかなり酷です。

では、どういった場合に責任を負うのでしょうか。

 

名義使用の許諾

誤解を与えた名前について、自分の商号を使用して事業を行うことを認めていた場合です。

ただし、責任の範囲は、認めた営業の範囲に限られて、これを超える取引については、責任は及びません。 例えば、元々木材の販売しかしていない会社は、電化製品の取引まで責任を負わされることはありません。  

 

虚偽の外観の存在

名板借人による商号の使用は、名板貸人が、許可を与えていた、与えていないに関わらず、責任が発生します。 第三者が客観的に見て、商号の使用を許諾したように見える場合も、許諾したことになります。  

 

第三者の誤解

第三者が、名板貸人と契約していると勘違いしたことが必要です。

また、この場合は、相手が善意無過失であることを求められています。

取引相手が、別の業者であることを知っていた場合や(悪意)、普通なら誰でも気付けた状況なのに気付かなかったような場合(重過失)には、相手側の落ち度なので、名板貸人に責任は発生しません。

 

責任の所在

名板貸しの契約が成立した場合に、その責任は、AB両社が取ることになります。

名板借人のB会社と相手のCさんで契約すると、BC間の契約が成立します。

当然当事者であるB会社は、Cさんへの責任を負います。

そして、名義使用を許諾した、もしくは、使用を放置していたA会社は、Bが契約した内容について、Bと連帯して責任を負います。

つまり、どちらか一方ではなく、A会社もB会社もCさんへ契約を履行する責任があるのです。

ここで、冒頭の会社法9条に戻りますが、 名板貸人は、善意の第三者に対して、その取引から生じた債務について、連帯して弁済する債務を負うと規定されています。

他にも契約に附随する責任も負わなくてはなりません。

  • 名板借人の債務不履行による損害賠償債務
  • 契約解除による原状回復義務
  • 手付金返還義務

 

近時の判例

最近の判例では、以下の事例で責任が認められています。

名板貸し責任の判例

会社の商号を使用して営業を行うことを許諾した後、ある程度外観排除の措置をとったが、同じビルで営業を継続しているのを黙認していたとして、名板貸責任が認められた事例。

(東京地判H7・4・28)

不動産売買、賃貸借の仲介等を営むY会社は、不動産仲介業を営むAに対しY名義を使用して、不動産仲介取引をすることを許諾し、Yが管理していたビルの4階フロアで営業させていたが、Aの契約違反を理由に許諾を撤回し、取締役の退任手続をした。

しかし、4階の営業所の荷物を3階の空きフロアに置くことを認めていた。

Aは4階営業所を立ち退かされた後も、3階を営業所として使用し、営業を継続していた。

飲食店を経営するX会社(原告)は、Aの紹介する物件につき仲介手数料と礼金をAに預託したが、当該物件につきAは仲介する権限を持っていなかったことが判明した。

XはAがYの支店長であると誤認して取引した(自分の取引相手はY会社である)として、Aに預託した仲介手数料・礼金の変換をYに求めた。

東京地裁の判断

ひとたび名義貸与者が作出した外観がその基本部分において存続する限り、名義貸与者が名義貸与の許諾を撤回したとしても、名義貸与者の帰責性は残存し、したがって、名義貸与者の負うべき責任には何ら消長を及ぼさないものと解するのが相当である。

Yが管理委託されていた右建物内で、AがY名義で営業を継続していたのを阻止しなかったというのであるから、Yが未だその作出した外観の基本部分を排除したということはできない。

として、Yに名板貸人としての責任を認めた。

 

まとめ

関係性が良好な方が事業を起こすときに、ついリスペクトされていると思い、商号の利用を認めてしまうかもしれません。

また、同じ地域にない他社が、同じ様な業種で頑張っていることに、エールを送るかもしれません。

しかし、取引をするお客様に誤解を与えて、被害を被らせてしまっては、起業としての責任が欠如しています。

日頃から、社会における自己の会社の立ち位置を確認して、経営をすることが大切ですね。  

 

 

 

   

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