登記 相続・遺言

もめた時ばかりではない、遺産分割協議が進まない場合の解決方法

相続登記に必要な書類集めが終わった後に、遺産分割協議が進まない時もあります。

 

遺産分割協議が進まない場合

遺言書がない場合や相続人が複数名いる場合には、法定相続分どおりに名義変更しようと思っても、話し合いを避けては通れません。

実は、法定相続分と同じ割合なら、相続人の1人から、全員分の登記申請ができてしまうのですが、同意を得ずに名義変更してしまうとトラブルの元です。

とは言え、遺産分割協議が進まなくなることも珍しくありません。

どんな場合に協議が成立しないのでしょうか。  

 

相続人同士でもめてしまった場合

遺産分割協議は、相続人全員が同意しなければ、成立致しません。

相続人の内1人でも納得しない方がいると、不成立になってしまうのです。

多数決で決められるような制度も定められておりません。

こういった場合には、家庭裁判所の遺産分割の調停又は審判の手続を利用することができます。  

 

遺産分割調停とは

遺産分割調停とは、相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てるものです

調停、調停委員や裁判官が、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらったりして、解決のために話合いが進められます。

話し合いの場を家庭裁判所に移したものなので、相続人全員の同意がなければ、この調停も不成立になります。

しかし、中立な立場の第三者が間に入ってくれる為、冷静に話し合いを進めることができ、解決策も提示していただけるので、解決に至りやすくなります。

それでも、話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、裁判官が、一切の事情を考慮して審判をすることになります。

 

遺産分割の審判とは

遺産分割の審判は、裁判官が、遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して判断を下す手続きです。

当事者の主張と異なる結果を出すことになりますので、裁判のように自分の主張が通るような資料の提出をしなければなりません。

こうなるとかなり時間がかなりかかりますので、長期化を覚悟しなければなりません。

遺産分割調停の申立用紙は、家庭裁判所でもらえますし、ホームページからもダウンロードすることができます。

 

 

亡くなった方や相続人が外国人の場合

亡くなった方や相続人に外国人の方がいる場合には、外国の書類が必要になる場合があります。

日本で当たり前の戸籍制度は、世界的には珍しく、中国、台湾、韓国といった国にしかありません。

韓国は2007年に戸籍制度を撤廃しています。

戸籍のある国では、日本の相続と同様にその国の戸籍を取得しなければなりません。

戸籍のない国では、その国の公証人に「宣誓供述書」を作成してもらいます。

また、戸籍の代わりになる様な証明書の発行が必要です。

日本語で作成されませんので、翻訳文の添付も必要になります。

宣誓供述書とは?

宣誓供述書とは宣誓供述を行う者が自分の知りえた事実を書き記し、大使館の係員や本国の公証人の面前でその記載内容が真実であることを宣誓した上で署名し、宣誓を受ける権限を有する者が同一人であること、確かに本人の供述であることを確認の上、認証文や印章を添付したものです。

また、書類の取り寄せが、困難だったり、日本の法律を適用するのか本国の法律を適用するのか、判断が難しい場合もあります。

このような場合には、費用がかかりますが、専門家に任せた方が安心です。  

 

相続人に未成年者がいる場合

相続人に未成年者がいる場合には、判断能力がまだ未熟であるため、父親や母親といった法定代理人が、その子に代わって遺産分割協議に加わります。

ただ、夫が亡くなったら、妻と子が相続人になる場合が多いように、親が決めてしまうと子供の権利を不当に奪うこともできてしまいます。

こういった関係を利益相反といいますが、未成年者の利益を守るために、法律では「特別代理人」を選任するように規定されています。

特別代理人は、家庭裁判所に申し立てて選任してもらうことになります。

特別代理人の選任申立用紙は、家庭裁判所でもらえますし、ホームページからもダウンロードすることができます。

未成年者者が複数名いる場合には、兼任することはできないので、それぞれに特別代理人を立てなければなりません。

特別代理人には、申立書に欄があるように、未成年者と利害関係がない伯父叔母といった親族や知人を候補者に立てることができます。

ただ、その候補者が適任かどうかは裁判所が判断しますので、場合によっては、弁護士等の専門家を家庭裁判所が選任する事もあります。  

 

行方不明の相続人がいる場合

相続人の中に行方不明の人がいる場合にでも、遺産分割協議は成立致しません。

戸籍等を集めながら調べていくと、住民票上の住所が分かるので、それを頼りに連絡を取って話し合いをしなければなりませんが、そこにもいない場合には、どうしたらいいのでしょうか。  

 

不在者財産管理人の選任

こういった場合は、いつまでも遺産分割協議ができないので、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立をすることになります。

不在といっても旅行に行ったり、海外に居住していてしばらく帰って来られない場合ではなく、失踪や蒸発の様な行方不明者のになっている状態をいいます。

単に連絡が取れないだけでは、法律上の不在者に該当しません。

具体的には、住所地を何度訪ねても不在で、周辺に聞き取りしていても足取りが掴めなかったり、別の方の表札が出ていたり、手紙を送っても宛先不明で戻ってきた様な場合には、申立をすることができるようになります。

名前のとおり財産を管理する人なので、特別な事情がない限り、行方不明者の法定相続分を確保することが職務になります。

選任申立時には、遺産分割協議の案も出さなければなりませんので、不在者の利益を害するような内容では、認められない可能性があります。

不在者財産管理人は、選任された後遺産分割協議に参加します。

不在者財産管理人ができる行為は決まっているので、遺産分割協議や不動産の売却といった特別の行為をする際には、選任後でも更に、家庭裁判所の許可が必要になります。 不在者財産管理人も候補者を立てることができます。

特別代理人と同じように、その候補者が適任かどうかは裁判所が判断します。

法律知識が必要となりますので、専門家が候補者でなければ、家庭裁判所が選任することになると思われます。

 

失踪宣告の申立

失踪宣告の申立ができる場合が2つ決められています。

普通失踪

「不在者の生死が7年間明らかでないとき」

危難失踪

「戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき」

こういった場合に、失踪宣告の申立をすることができます。

失踪宣告がされると、不在者に対して,法律上は死亡したものとみなされます。

相続登記自体の手続きもその方が亡くなった場合と同様の手続きになります。

亡くなったと同じ効力を持たせるので、手続きは容易でない上に、相当期間の経過を待たなくてはならないので、遺産分割協議の為にこの方法を選択するのは、現実的ではありません。  

 

認知症の相続人がいる場合

相続人の中に、高齢な方がいると認知症を発症している場合があります。

認知症によって、自分の意思表示ができなかったり、物ごとを判断することができない場合には、法律上の意思能力がない為、遺産分割協議ができません。

法律上の行為は、意思能力がないと無効となってしまいます。

これは意思能力がない方の利益を害するような、不利益な内容の遺産分割協議を成立させてしまうことの防止を目的に規定されています。

他にも、知的障害や精神障害といった方も意思能力がない場合には、遺産分割協議に参加できません。  

 

成年後見制度の利用

遺産分割協議を進めるためには、認知症の方の利益を守る成年後見制度を利用する方法があります。

成年後見人という代理人を選任し、本人に代わって諫分割協議に参加してもらいます。

成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類があります。  

 

法定後見制度

意思能力が不十分な方を保護するために、本人または親族が家庭裁判所に申立を行うことで後見人を選任してもらいます。

後見人が本人に代わって法律行為を行ったり、同意権を与えることで本人を保護する制度です。  

 

任意後見制度

本人に判断能力がある段階に、あらかじめ自分が信用している人と任意後見契約を締結しておきます。

判断能力が乏しくなって来たら、後見人になってもらい、財産管理をしてもらう約束をしておく制度です。

事前に準備しておく必要がありますので、判断能力がなくなってからでは、利用できません。  

 

法定後見の類型

法定後見制度には、判断能力の度合いに応じて、段階が分けられています。

(1)補助 … 精神上の障害により判断能力が不十分な方

(2)保佐 … 精神上の障害により判断能力が著しく不十分な方

(3)後見 … 精神上の障害により判断能力を欠く状態にある方

どの類型になるかは、意思の診断書や鑑定により、裁判官の判断によります。  

 

成年後見制度のデメリット

成年後見人が選任されると、よほどの事情がない限り、本人が亡くなるまで財産の管理をすることになります。

裁判所に毎年財産状況等の報告もしてもらわなくてはなりません。

選任申立の際に、親族を候補者に立てることができますが、なれるかどうかは、裁判所の判断によります。

もし、親族が成年後見人になれたとしても、遺産分割協議が整い、相続登記自体が完了した後も、本人が亡くなるまで財産管理や裁判所への報告を、続けなければなりません。

後見人に弁護士等の専門家がなった場合は、本人が亡くなるまで報酬が発生し続けます。

目の前の遺産分割協議はとても大切ですが、先々のことも見据えて選任申立をしなければなりません。  

 

制度のあらまし

成年後見制度の詳しい内容は、家庭裁判所のパンフレットで丁寧に説明されているので、そちらをご覧ください。    

まとめ

遺産分割協議がまとまらない場合は、上記のように色んな場合があります。

話し合いがまとまらない場合もやっかいですが、未成年者、行方不明者、認知症の方の場合もスムーズに行くとは限りません。

その代理人になる方は、本人の財産を確保する職務があるので、法定相続分の割合が大きかったりすると、選任されても円滑に協議できないかもしれません。

財産が多くても、少なくても、お気持ちが入るとなかなか協議が成立しません。

残された家族の為に遺言書を残しておくと、こういった問題が少なくなります。  

 

 

 

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