自筆証書遺言には、守らなければいけないいくつかのルールがありますが、内容については、どのように書いても遺言者の自由です。
基本的な約束事は、別の記事で紹介しましたので、御確認下さい。
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自由に書いていいと言っても、なかなかどうやって書けばよいのか、分からないと思います。
記載例に従って作成するとスムーズですので、いくつかのケースに分けて文例を御紹介致します。
ご自身の状況に合わせて参考にしてみて下さい。
妻に全て財産を渡す場合
文例1(丁寧な記載)
遺 言 書
遺言者〇〇〇〇は、次のとおリ遺言する。
第1条
遺言者は、その所有する次に掲げる不動産を含む一切の財産及び債務を、遺言者の妻〇〇〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に相続させる。
(1)土地
〇〇県〇〇市〇〇1丁目2番3
宅地 〇〇〇.〇〇平方メートル
(2) 建物
〇〇県〇〇市〇〇1丁目2番地3 家屋番号〇番
鉄筋コンクリート造2階建 居宅
1階 〇〇.〇〇平方メートル
2階 〇〇.〇〇平方メートル
(3)〇〇銀行〇〇支店の遺言者名義の預金全部
第2条
遺言執行者として前記、妻〇〇〇〇を指定する。
2 遺言者は、前項掲記の遺言執行者に対して、本遺言執行のための不動産、預貯金、株式等の名義変更、解約及び換金等の権限、並びに貸金庫契約、保護預かり契約に関する開扉、解約、内容物の受領に関する権限(各手続き又は行為をするにあたり相続人の同意は必要としない)、その他本遺言を実現するために必要な一切の権限を付与する。
記
令和〇〇年〇〇月〇〇日
〇〇県〇〇市〇〇1丁目2番3号
遺言者(署名) 印
相続人が複数いる場合、遺言がなければ相続人全員の共同相続になります。
遺言を残しておけば、特定の者にのみに財産を渡すことができます。
特定の者だけに財産を渡す場合には、他の相続人に遺留分がある場合もありますので、お気を付け下さい。
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文例2(簡略な記載)
遺 言 書
遺言者〇〇〇〇は、次のとおリ遺言する。
遺言者に属する一切の財産は、妻〇〇〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に相続させる。
記
令和〇〇年〇〇月〇〇日
〇〇県〇〇市〇〇1丁目2番3号
遺言者(署名) 印
相続財産に漏れがないように
文例2のように、「遺言者は、その所有する一切の財産を、遺言者の妻〇〇〇〇に相続させる。」だけ記載しても、問題はありません。
しかし、相続財産が明確な場合は、なるべく個別具体的に表示すると相続を受ける者にとって分かりやすくなります。
全てを網羅したつもりでも、細かな出資金や動産といった財産が漏れてしまう場合もあります。
滞りなく名義変更するためには、「その他一切の財産を相続させる」記載を残すことが大切です。
文例1では、第2条第1項で、遺言執行者の指定がしてあります。
また、第2項では、遺言執行者の権限が注意書きしてあります。
遺言執行者とは?
遺言執行者とは、「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務」があり、手続きをする人です。
必ずしも必要ではないのですが、遺言執行者が選任されていると、預貯金の解約等は、基本的に遺言執行者1人で手続きができますので、選任しておいた方が、後の手続きが簡単になります。
ただし、預貯金等の払い戻しについて、遺言執行者が指定されていても、相続人全員の承諾書や印鑑証明書を要求する金融機関もあります。
これは、遺言書自体に後日の変更があったり、無効になる場合の危険を避けるためかと思われます。
その為、本来第2項の注意書きは、法律上不要な記載ですが、書いてあった方が無用な苦労をしなくて済むかもしれません。
ポイント
自筆証書遺言には、いくつかのルールがありますが、どのように書いても遺言者の自由です。
子ども達がいても、妻に全ての財産を譲ることも可能です。
しかし、遺留分を侵害してしまうと余計な揉めごとに発展する場合もありますので、よく考えて作成しましょう。