前回まで、大切な家族が亡くなった場合、やらなくてはならない手続きを時系列で4つに分けて、必要な手続きについて解説しました
- 亡くなった直後に必要な手続き
- 葬儀後お御礼が済んだ頃にする確認事項
- 急がないけど、ほっておけない手続き
- 落ち着いてからでもいい手続き
今回は、そんなに急がないけど、ほっておけない手続きについて解説致します。
準確定申告
亡くなった方に、所得が会った場合には、亡くなった日から4ヶ月以内に、「準確定申告」をしなければなりません。
1月1日から、亡くなった日までの所得を申告します。
前年の申告をしないまま、亡くなってしまった場合も、申告が必要です。
準確定申告をしなければいけない方は、確定申告をしなければならない方と、ほぼ同じです。
なので、亡くなるまで故人が確定申告をしていた場合に、準確定申告が必要になると思って、間違いありません。
通常の確定申告書に「準確定」と記入して、申告をします。
また、準確定申告をすることで、還付金が戻ってくる場合もあります。
年金から源泉徴収税額が差し引かれている場合、医療費控除や配偶者控除、生命保険料控除といった所得控除とともに申告をすれば、源泉徴収されていた税額の一部が戻って来ます。
なお、以下の様な場合には、準確定申告は不要です。
- 被相続人が給与所得者
(年収2,000万円以下、勤務先1ヶ所のみ、他の所得20万円以下) - 被相続人が年金受給者
(年金400万円以下、他の所得20万円以下) - 相続放棄をした相続人
ただ、不要ではありますが、還付金が返ってくる様な場合は、申告した方が得策です。
健康保険と年金
健康保険と年金の手続きは、一般的に期限がありません。
仮にあっても、かなり先でも大丈夫なくらいです。
しかし、やらなくてもいいと考えていると、いつまでもやれないかもしれないので、支給金されるものは、早めに受け取った方が、間違いありません。
但し、支給される期間にも、それぞれ5年や2年といった、時効があるので、やらないままでいると、受け取れなくなってしまうので、注意が必要です。
葬祭費
国民健康保険に加入している方が死亡したときは、「葬祭費」が葬儀執行人に支給されます。
金額は、5万円のところが多いですが、条例や規約で定められているので、幅があります。
お住まいの市区町村役場へ御確認下さい。
おおよそ申請には、以下の書類等が必要になります。
- 死亡した方の保険証
- 葬儀執行人の認印と振込先
- 会葬礼状
- 運転免許証等の本人確認資料
- 通知カード又は、マイナンバーカード
- 受給していた場合は、高齢受給者証
葬祭費支給申請書の例
高額療養費
医療費が一定の額を超えた場合に、超えた分を支給してもらえる制度が、「高額療養費」です。
病院や薬局で支払った金額が、毎月一定額を超えると、超えた金額を支給してもらえます。
高額療養費は、ご健在の内はもちろん、亡くなった後でも相続人により、申請することができます。
但し、入院時の交通費や食費、交際費、生活費といった、保険外の経費は含まれません。
高額療養費の計算方法は、年齢が70歳以上か未満に加え、年収の違いで金額が決まります。
厚生労働省のサイトが詳しいので、そちらを御確認下さい。
また、亡くなられた方が、70歳以上で、高齢受給者証を提示していた時は、療養費支払いの際、既に限度額で留められています。
こういった場合は、改めて高額医療費が支給されることは、ありません。
受給停止と未支給年金の請求
年金を受けている方が亡くなると、年金を受ける権利がなくなるため「受給権者死亡届(報告書)」の提出が必要です。
亡くなった方が受け取れなかった年金は、亡くなった月分までを未支給年金として、生計を同じくしていた遺族が受け取ることができます。

日本年金機構のサイトより
年金を受けていた方が亡くなった当時、その方と生計を同じくしていた、以下の遺族が未支給年金を受け取ることができます。
- 配偶者
- 子父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- その他(1)~(6)以外の3親等内の親族
未支給年金を受け取れる順位もこのとおりです。
※亡くなった方と請求する方が同一世帯でなかった場合は、「生計同一についての別紙の様式」の添付が必要です。詳しくは、窓口へお問い合わせ下さい。
最寄りの年金事務所へ「未支給年金・未支払給付金請求書」を提出して請求します。

日本年金機構のサイトより
未支給年金の請求書は、年金受給権者の死亡届とセットです。
住基ネットによって「年金受給権者死亡届」は、亡くなった直後の提出が不要とされているので、まだ提出していない場合は、ここで提出します。
なお、市区町村役場へ死亡届の提出が遅れてしまうと、亡くなられた後の分の年金が振り込まれてしまうことがあります。
この場合、余分に受け取った年金を返還しなければなりませんので、早めに受給停止されたことを確認することが大切です。
遺族年金
遺族年金には、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」があり、亡くなられた方の年金の納付状況などによって、いずれか又は両方の年金が支給されます。
遺族基礎年金
「遺族基礎年金」は、国民年金加入中の家計を支えていた方が亡くなった場合に受け取ることができます。
受給する要件として、遺族が亡くなった方に生計を維持されていて、婚姻していない18歳未満の子がいることも必要です。
正確には、18歳になる年度の末日(3月31日)まで、配偶者と子が受け取ることができます。
障害等級1級または2級の障害状態にある子は、20歳になる年度まで受け取ることができます。
遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)
国民年金(遺族基礎年金) | ||
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支給要件 | 被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき。(ただし、死亡した者について、死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が加入期間の3分の2以上あること。) | |
ただし令和8年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。 | ||
対象者 | ★死亡した者によって生計を維持されていた、 (1)子のある配偶者 (2)子 子とは次の者に限ります
| |
年金額 | 781,700円+子の加算 子の加算 第1子・第2子 各 224,900円 第3子以降 各75,000円
|
遺族厚生年金
「遺族厚生年金」は、厚生年金保険の被保険者等であった方が、受給要件を満たしている場合に、亡くなられた方によって生計を維持されていた遺族が、受け取ることができます。
遺族厚生年金は、遺族基礎年金と比べて、子どもがいない夫婦だった場合にも、支給される点が大きな違いです。
遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)
厚生年金保険(遺族厚生年金) | |
---|---|
支給要件 |
|
対象者 | 死亡した者によって生計を維持されていた、
※子のない30歳未満の妻は、5年間の有期給付となります。 ※子のある配偶者、子(子とは18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の障害者に限る)は、遺族基礎年金も併せて受けられます。 |
寡婦年金
18歳未満の子どもがいなくて、遺族基礎年金を受け取れない場合でも、「寡婦年金」を受け取れる場合があります。
寡婦年金は、10年以上婚姻関係があり、亡くなった夫に生計を維持されていた場合に支給されます。
内縁の妻でも受け取れます。
生計を維持されていた妻に対して、60歳から65歳になるまでの間支給されます。
年金額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した、老齢基礎年金額の4分の3相当です。
死亡日の前日において、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が10年以上必要です。
但し、妻が繰り上げ老齢基礎年金をもらっている場合には、寡婦年金をもらえません。
※平成29年8月1日より前の死亡の場合は、25年以上の期間が必要です。
死亡一時金
「死亡一時金」は、国民年金の制度で、年金を受け取らないまま亡くなった場合に、その遺族に支給されます。
死亡一時金が支給されるには、亡くなった人の死亡日の前日に、死亡日の前月までの国民年金の第1号被保険者や、任意加入被保険者としての納付月数が、36月以上必要です。
老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった時、その方によって生計を同じくしていた遺族に支給されます。
受け取れる順番は、以下の順位です。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
光熱費等の支払い方法の変更や解約
亡くなった方が契約者だった場合、契約者の変更をしておきましょう。
すぐには困りませんが、亡くなった方の口座から、自動引き落としになっている場合には、支払が滞ってしまい、使用できなくなる可能性もあります。
契約者の変更をしなければいけないところは、以下が考えられます。
- 借地や借家の契約
- 電気
- ガス
- 水道
- 固定電話・携帯電話
- NHK
- インターネット
借地や借家については、その権利を取得した相続人が、亡くなった方の賃借人としての地位を一切承継しますので、本来は何もする必要はありません。
ただ、やはり賃借人が変更したことを知らせておいた方が、その後のお付き合いがスムーズだと思われます。
空き家になる場合には、変更ではなく、解約が必要になります。
他にもご家庭によって、異なりますので、請求書が来た場合などに、確認してみましょう。
他にも運転免許証やパスポートの返納、クレジットカードの解約もしなくてはなりません。
他にも年会費が発生するようなものがありましたら、早めに解約をした方が、余計な出費を抑えられます。
まとめ
今回は、そんなに急がないけど、ほっておけない手続きについて、ご説明しました。
しかし、そんなに急がないと言っても、手続きには期限があります。
期限がないものでも、ほっておくと、余計な出費が増えるかもしれません。
また、行政から支給してもらえるものは、全て時効があります。
もらえるものも、もらえなくなるかもしれないのです。
少し落ち着いたら、気持ちの途切れない内に、できる手続きは、全て済ませてしまいましょう。