起業の雑学

法人や個人の起業に必要な手続きを税制と労務を中心に解説します

2020年5月22日

起業の手続き

あらたに事業を開始する際に必要な手続きについて、法人を設立して事業を行う場合と、個人事業として創業する場合で多少の違いがありますが、税金と雇用を中心にご説明します。

 

税法関係

法人税や所得税、消費税に関する手続きは、課税官庁が税金の徴収のために定めている手続きですが、事業を開始してから一定の期間内に届出や申請をしておくと、税務上の優遇を与えられます。

逆に税務上の手続きをしておかずに、優遇を受けないまま課税されると、かなりの不利益を受けることがありますので、所定の手続きをしておかなければなりません。

 

税務署

税務署には、法人税、所得税、消費税に関する届出があり、それぞれ提出期限があります。

このうち給与や源泉所得税に関するものは、役員や従業員に給料を支払う場合に必要です。

また、消費税に関する届出は、いくついか選択肢があります。

法人設立届(法人)設立後2ヶ月以内
個人事業の開業届(個人)開業後1ヶ月以内
青色申告の承認申請書(法人)設立後3ヶ月以内
青色申告の承認申請書(個人)開業後2ヶ月以内
給与支払事務所等の開設届出書
(法人個人)
開設後1ヶ月以内
源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書
(法人個人)
提出した月の翌月から
消費税課税事業者選択届出書課税事業者となろうとする課税期間の開始の日の前日まで
消費税簡易課税選択届出書
(法人個人)
事業年度終了の日まで
法人税の申告期限の延長の特例の申請書
(法人)
事業年度終了の日まで

 

都道府県税事務所および市町村

 住民税や事業税の申告納付のために、税務署と同時に都道府県税事務所と市役所・町村役場にも「法人設立届」または「事業開始届」を提出します。

 

社会保険・労働保険

社会保険の対象となる役員や従業員がいる場合には「年金事務所」「社会保険(厚生年金と健康保険、介護保険)」の適用を受けます。

法人の事業所と社会保険対象者が5人以上の個人事業所は、社会保険に必ず入らなければなりません。

また、一人でも従業員がいる場合には「労働保険(労災保険と雇用保険)」に加入する必要があります。

短期のアルバイトなどでも労災保険は必要です。

 

年金事務所

 役員や従業員は入社した日から社会保険の被保険者になりますが、事業所としての新規適用届や被保険者の資格取得届は5日以内に行わなければなりません。

厚生年金保険・健康保険新規適用届最初
被保険者資格取得届社員入社の度に5日以内

 

労働基準監督署

従業員を採用した場合には、まず「労災保険」への加入が必要です。

これは最寄の「労働基準監督署」で届出をします。

保険料は、労災保険料と雇用保険料を労働基準監督署に申告し、初年度分(3月まで)を概算払いします。

その他に従業員に残業をさせる場合「サブロク(36)協定」の届出をします。

また、従業員が10人以上になる場合「就業規則」の届出が必要になってきます。

保険関係成立届10日以内
概算保険料申告・納付50日以内

 

公共職業安定所(ハローワーク)

雇用保険の対象になる従業員を雇った場合には、事業所として「雇用保険」の適用を受け、従業員の加入手続きをします。

これは法人でも個人事業でも同じです。週に20時間以上働く従業員で、雇用期間が31日以上の人が雇用保険の対象です。

雇用保険適用事業所設置届10日以内
雇用保険被保険者資格取得届入社翌月10日まで

 

会計と税務に関する留意点

法人設立の場合、法人税や消費税の観点から考えると、資本金あるいは出資金の額や株主構成は、重要なポイントになります。

それは、中小企業に対する優遇があるからです。また、大企業が主要な株主になっていると中小企業の優遇が受けられないこともあります。

 

中小企業の特例

法人税では、役員報酬に関して、税法上の損金算入ルールがあります。

個人事業で、生計同一親族に給与を支払おうとする場合には、事前に届出が必要です。

実際に事業を開始したあとは、経理の帳簿を作り、帳簿書類を整理して保存しておくことが義務づけられています。
税務上の帳簿保存期間は7年間です。

 

従業員を雇った場合

従業員を雇用する場合には、労働条件を書面で明示することが必要ですので、「雇用契約書」を作成した方が後々問題が起きにくい可と思われます。

正社員以外のアルバイトやパートの従業員についても例外ではありません。

雇用関係の書類の保存期間は、記入が終わったときから3年間です

労働者名簿、出勤簿(タイムカードなど)、賃金台帳の作成が必要です。

 

創業に対する助成金

雇用保険の事業として、従業員を雇った事業に対して助成金や奨励金が出ることがあります。

例えば次のようなものがありますが、ほとんどの場合に事前の計画提出が求められます。

 

事業主の方のための雇用関係助成金

その他にも様々な助成金があります。

ただ、書類の数も多く、複雑で煩雑な手続きでもありますので、お近くの行政機関や商工会議所、商工会。税理士、社会保険労務士といった専門家に相談された方が、早いかもしれません。

 

まとめ

起業する際に、税務、労務、法務関係の諸手続を避けては通れません。

全て自分でやると、仕組みも分かり今後に活かせると思いますが、事業自体を疎かにしては、本末転倒です。

行政機関や専門家の利用も考え、賢くスタートしたいですね。

 

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