終活という言葉も、耳にするようになってからしばらく経ち、すっかり定着しました。
終活で取り組む内容は、さまざまですが、「遺言」もその中の一つです。
家族から書いてくれと言うと「縁起でもない」と思われそうですが、先々のことを考えるならば、必ず書いておいた方がよいものです。
そこで、この記事では、遺言とはどういったものかについて解説し、実際に遺言書を書く場合の書き方を分かりやすく解説致します。
ちょっとしたことで、遺言は無効になってしまいます。
残される家族の為に様式も内容も適切なものを残さないといけません。
遺言を書いておくべき人
- 財産を特定の人に残したい人
- 再婚をしている人
- 子供がいない人
- 経営者
- 籍を入れていない事実婚の方
上記の様な方は、特に遺言を書くべきです。
書かないと残された家族がトラブルに巻き込まれることは、珍しくありません。
遺言書とは?
遺言とは、故人が自らの死後のために遺した言葉や文章をいいます。
一般的に「ゆいごん」と読みますが、法律用語としては、「いごん」と読まれています。
法律上の遺言は、死後の法律関係を定めるための最後の意思表示であって、法律上の効力を生じせしめるためには、民法に定めた方式にどおりに作成しないと無効になることもあり得ます。
家族への想いや希望を記載した遺言は、民法に規定の遺言ではありません。
ここでの遺言は、法律上の効力を持たせる遺言について説明しています。
遺言をすることができる人
一般的に20歳未満未成年者は、単独で法律行為をすることができません。
親の同意等が必要になります。 未成年者は、まだ知識や経験、判断能力が未熟である為、契約などをした場合の不利益から保護するためです。
しかし、遺言については、20歳未満でも満15歳になれば、単独で遺言ができるものとしています。
被保佐人、被補助人についても、遺言能力の制限はありません。 しかし、意思能力は必要とされています。
なので、14歳未満の者がした遺言は必ず無効となりますが、15歳以上であれば無条件で有効というわけではなく、上述の遺言能力が要求されるのです。
意思能力とは?
意思能力とは、法律上の判断において自己の行為の結果を判断することができる能力のことを言います。
遺言では、自分のする遺言の内容や、その結果生ずる法律効果を理解して判断できる能力のことです。 この能力を「遺言能力」といいます。
また、遺言は、遺言者自身が単独で行うべき行為であり、代理によることはできず、他の人の同意を要件とすることもできません。
成年被後見人も遺言が可能
成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時には、医師2人以上の立会いを要件として、遺言をすることができるとされています。 その場合は、立ち会った医師は、遺言者が遺言時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して署名•押印をしなければな らなりません。
成年被後見人や未成年者は、有効な遺言書を作ることができるのか?
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遺言書でできること
遺言書に何を書くかは、自由です。法的な効力を持たせる内容から、残された家族に気持ちを伝える項目まで、書くことができます。
想いを残す
遺言書の最後に附言事項として、自分の気持ちを残される家族へ向けて書いておくこともできます。
附言事項
具体的な附言事項を記載する場所は、法定遺言事項をすべて書いた後に記載します。
末尾には日付、住所、氏名を記載してき押印しますが、その上の部分に当たります。
附言事項とは?
付言事項とは、法定遺言事項以外の内容であり、具体的には「感謝の想い」や「遺言を書いた理由」などを記載する部分です。
「お母さんを大切に」とか「末永く兄弟仲よくして欲しい」といった希望を残す項目を附言事項と言います。
法的な拘束力はありませんが、残された遺族にとっては想いを言葉で受け取る大切な意味を持ちます。
例えば、長男に多く残す場合には、これまで面倒をみてくれた感謝の言葉を残すと、相続人間での確執も減らせるかもしれません。
附言事項の例
「附言事項」
私は○○というよき妻と2人の子供たちに恵まれて、幸せな人生を送ることができました。
心から感謝しています。 妻の○○には、ゆっくりと老後を過ごしてもらえるように、これまで一緒に住んできた土地と建物を残しました。
私が残せるものは、この土地と建物だくらいしかありません。
これだけで遺産のほとんどになってしまいますが、子供たちはお母さんに対して遺留分を請求することのないようにしてください。
将来的には、いずれは2人のものになるので、お母さんの為に待ってください。
○○と○○には、父親としてできるかぎりのことをしたつもりですが、2人に残した現金に差があるのは、長男の○○には、私の病気のために介護をまでさせてしまい、申し訳なく思っているからです。
どうか理解してください。 ○○、○○、○○、これまで本当によい人生をありがとう。
お母さんのことをよろしくお願いします。
附言事項は法的な効力は発生しませんが、遺言に関する被相続人の想いを伝えることで、被相続人の意思が尊重されやすくなります。
その結果、遺言書の内容を相続人が納得しやすくなり、相続トラブルを回避できるので、円満な相続に繋がります。
法的な効果を発生させる
遺言書で法律的な遺言の効果として、たくさんのことを決めておくことができますが、以下はその中でも代表的なものです。
相続財産の分け方
どの相続人にどの財産を取得させるか、指定することができます。
その相手は、相続人ばかりでなく、全くの他人に財産を譲ることもできます。
相続人以外の者に財産を与えることを「遺贈」といいます。
相続する権利を奪える
遺言者に対して、虐待や侮辱等の行為をした相続人から相続人の資格を奪うことできます。
これを「廃除」といいます。 遺言で廃除をすることもできます。
遺言執行者の指定
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。
遺言が執行される時には、遺言者は亡くなっていますから、遺言の内容を自らの手で実現させることはできません。
そこで、遺言執行者がいると、遺言者の代わりに遺言の内容を実現させることができるのです。
遺言を実現してくれる遺言執行者を指定し、また、その指定を委託することができます。
祭祀承継者の指定
祭祀(さいし)とは、祖先や神をまつることをいいます。
民法では、祭祀財産の種類として、「系譜」「祭具」「墳墓」が挙げられています。
祭祀承継者とは、その祭祀財産や遺骨を管理し、祖先の祭祀を主宰すべき人のことです。
先祖の供養やお墓を守る人を指定できます。
認知ができる
自分に婚姻外のこどもがいたような場合、遺言で認知をすることができます。
法律上の親子関係を発生させることができるのです。
まとめ
遺言書を残すことで、亡くなった後の法的な効果を持たせることができます。
トラブル防止の為に書く場合もあれば、どうしても残したい相手への配慮から書く場合もあります。
しかし、どんな場合であっても、残された家族の為に考えて書くことが大切です。
自分が考えていることは、家族も納得できる内容であることが多いはずですので、円満に引き継げるように日頃の関係性も大事にしたいですね。