相続・遺言・登記

【死後事務委任契約】安心と尊厳を守る為、生前に委任する事務手続き

2020年10月19日

人がお亡くなりになると、葬儀の手配や各役所の手続から金融機関の解約等、やらなくてはならないことがたくさんあります。

本来、亡くなった方の家族が行うのが一般的ですが、相続人がいない場合や、いても疎遠であったり、遠方に居住している為、手続きができない場合もあります。

こういった、手続きを「死後事務」といいますが、自分の生前に上記の様な状況だと、死後事務が円滑に執り行われることを期待できません。  

 

死後事務委任契約

婚姻をしなかった方や、子供がいない夫婦の方は、家族関係が希薄になっている現代で、死後事務を行う方がいないことが、あるかもしれません。

このように、死後事務を行う適当な相続人又は親族がいない場合、生前中にあらかじめ誰かへ手続きをお願いしておく契約が「死後事務委任契約」です。

葬儀や納骨、遺品整理や事務手続など、任意後見契約や遺言書では、お願いできない死後の諸手続を、遺族の代わりに代行してもらう内容です。

  本人が亡くなった後に、やらなくてはならない事務として、以下のものがあります。

  • 医療費の支払いに関する事務
  • 家賃・地代・管理費等の支払いと敷金・保証金等の支払いに関する事務
  • 公共サービス等の名義変更・解約・清算手続きに関する事務
  • 老人ホーム等の施設利用料の支払いと入居一時金等の受領に関する事務
  • 通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務
  • 墓石建立•菩提寺の選定等の永代供養に関する事務
  • 相続財産管理人の選任申立手続に関する事務
  • 賃借建物明渡しに関する事務
  • 行政官庁等への諸届け事務

たくさんの事務をしなければなりませんが、その手続きも、しなくてはいけない時期に分けることができます。

 

 亡くなってすぐにやらなくてはならない手続き

  1. 通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務
  2. 家賃・地代・管理費等の支払いと敷金・保証金等の支払いに関する事務
  3. 公共サービス等の名義変更・解約・清算手続きに関する事務

 

 

亡くなって短期問に終了する手続き

  1. 医療費の支払いに関する事務
  2. 老人ホーム等の施設利用料の支払いと入居一時金等の受領に関する事務

 

亡くなってから、長期にわたる手続き

  1. 墓石建立•菩提寺の選定等の永代供養に関する事務
  2. 相続財産管理人の選任申立手続に関する事務
  3. 賃借建物明渡しに関する事務
  4. 行政官庁等への諸届け事務

 

その他の手続き

委任しておく人によって内容に差違が出てきますので、下記の様な事項も事務として行った方がいいかもしれません。

  1. 親族等へ連絡する事務
  2. インターネット上のサイトやSNS等への死亡の告知、解約・退会に関する事務
  3. パソコンやスマホ等の情報を消去する事務
  4. ペットを希望の引き渡し先へ託す手続き

 

誰にお願いしたらよいか?

家族や身寄りのない方が作成することが想定されます。

死後事務委任は契約なので、誰を受任者としても構いません。

しかし、実際には誰でもできる事務ではないので、弁護士や司法書士と行った専門家に対して死後事務を委任するか、死後事務を扱っている葬儀会社にお願いすることになります。

実際にこの契約を締結しようとすると、単独で死後事務の委任だけをお願いするのではなく、任意後見契約と同時に締結することなるかと思います。

他に、生前の財産管理契約や公正証書遺言も同時に作成し、備えた方が万全です。

任意後見契約や成年後見制度は生きている時の自分ために利用する制度です。

死後事務委任契約は亡くなったあとの自分の為に利用する制度です。

必ずしも公正証書で作成する必要はありませんが、自分の気持ちをしっかり決めて残す意味で、公正証書で作成した方が、こころが軽くなると思います。

契約内容自体も大切ですが、自分にもしもの時が訪れたときに、すぐに対応していただける方にお願いできるかどうかが肝心です。

 

死後事務委任契約の例

死後事務委任契約の例

死後事務委任契約公正証書

(契約の趣旨)
第1条 委任者甲と受任者乙とは、以下のとおり死後事務委任契約を締結する。

(委任者の死亡による本契約の効力)
第2条 甲が死亡した場合においても、本契約は終了せず、甲の相続人は、委託者である甲の本契約上の権利義務を承継するものとする。
2 甲の相続人は、前項の場合において、第11条記載の事由がある場合を除き、本契約を解除することはできない。

(委任事務の範囲)
第3条 甲は、乙に対し、甲の死亡後における次の事務(以下、「本件死後事務」という。)を委任する。
⑴通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務
⑵永代供養に関する事務
⑶老人ホーム入居一時金等の受領に関する事務
⑷別途締結した任意後見契約の未処理事務
⑸行政官庁等への諸届け事務
⑹以上の各事務に関する費用の支払い

(通夜・告別式)
第4条 前条の通夜及び告別式は、〇〇〇寺に依頼する。

(永代供養)
第5条 第4条の納骨及び埋葬は、〇〇〇寺にて行う。

(連絡)
第6条 甲が死亡した場合、乙は、速やかに甲が予め指定する親族等関係者に連絡するものとする。

(預託金の授受 預託金を設定する場合)
第7条 甲は、乙に対し、本契約締結時に、本件死後事務を処理するために必要な費用及び乙の報酬に充てるために、金〇〇万円を預託する。
2 乙は、甲に対し、前項の預託金(以下「預託金」という。)について預かり証を発行する。
3 預託金には、利息をつけない。

(費用の負担)
第8粂 本件死後事務を処理するために必要な費用は、甲の負担とし、乙は、預託金からその費用の支払いを受けることができる。

(報酬)
第9条 甲は、乙に対し、本件死後事務の報酬として、金○万円を支払うものとし、本件死後事務終了後、乙は、預託金からその支払を受けることができる。

(契約の変更)
第10条 甲又は乙は、甲の生存中、いつでも本契約の変更を求めることができる。

(契約の解除)
第11条 甲又は乙は、甲の生存中、次の事由が生じたときは、本契約の解除することができる。
⑴乙が甲からの預託金を費消するなど信頼関係を破綻する行為をしたとき
⑵乙が健康を害し死後事務処理をすることが困難な状態になったとき
⑶経済情勢の変動など本契約を達成することが困難な状態になったとき

(契約の終了)
第12条 本契約は、次の場合に終了する。
⑴乙が死亡又は破産したとき ⑵甲と乙が別途締結した「任意後見契約」が解除されたとき

(預託金の返還、精算)
第13条 本契約が第11条(契約の解除)又は第12条(契約の終了)により終了した場合、乙は、預託金を甲に返還する。
2 本件死後事務が終了した場合、乙は、預託金から費用及び報酬を控除し残余金があれば、これを遺言執行者又は相続人若しくは相続財産管理人に返還する。

(報告義務)
第14条 乙は、甲に対し、1年ごとに、預託金の保管状況について書面で報告する。
2 乙は、甲の請求があるときは、速やかにその求められた事項につき報告する。
3 乙は、遺言執行者又は相続人又は相続財産管理人に対し、本件死後事務終了後1か月以内に、本件死後事務に関する次の事項について書面で報告する。
⑴本件死後事務につき行った措置
⑵費用の支出及び使用状況
⑶報酬の収受

(免責)
第15条 乙は本契約の条項に従い、善良な管理者の注意を怠らない限り、甲に生じた損害について責任を負わない。

※公証役場のホームページから引用

 

 

 

-相続・遺言・登記

© 2022 たいしのブログ